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日本の骨董筆記具と喫煙具 香港最大の私設博物館で展示会

漆工芸の技法のひとつ蒔絵が施された明治期のたばこ盆

漆工芸の技法のひとつ蒔絵が施された明治期のたばこ盆

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 骨董(こっとう)品店が並ぶ荷李活道に位置する「兩依博物館( Liang Yi Museum)」(181-199 Hollywood Rd, Sheung Wan, Hong Kong Tel:2806 8280)で3月18日から約5か月間にわたり、日本と中国、ヨーロッパの骨董品を展示する展示会が開催される。展示会名は「Chrysanthemum and Dragon: The Art of Ornamentation in Japan and China in the 17th?19th Century」で、在香港日本総領事館も後援する。

たばこ盆の形を模した持ち運び用筆箱。漆工芸の名家として知られている古満寛哉 の名前入り

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 同館は2014年にオープンした香港最大の私設博物館で、世界でも最大規模の明・清朝時代の中国アンティーク家具コレクションを所有する。30年以上かけて収集された中国のアンティーク家具は現在300点以上。これに加え、カルティエ、ブシュロン、ヴァンクリーフ&アーペルなどヨーロッパの老舗ブランドのアンティーククラッチバッグや化粧品ケースなど、1880年代後半から1960年代に作られた400点余りのコレクションも所有する。所蔵品の中には台湾の国立歴史博物館や北京の故宮博物館、ロンドンのゴールドスミス・ホールでの展示のために貸し出された品も。4階建ての博物館は中国のアンティーク家具を展示する常設展エリアを設けているほか、定期的に特別展を開催し歴史的美術品と文化に光を当てている。

 今回の展示では同館が新たに入手した江戸時代から昭和までの矢立とキセルのコレクションを初公開し、計180点以上の日本の骨董品を展示する。矢立とはすずりと筆を一つの容器に収めた携帯用筆記具で、その使用は鎌倉時代までさかのぼることができ、明治に入り万年筆が輸入されるまで広く使われていた。日本独自の工芸品として海外にも熱心なコレクターがいる。展示は4つのセクションに分けられ、第一が「矢立を通じて知る日本の筆記文化」として矢立のほか、漆工芸の技法の一つである蒔絵が施された文台とすずり箱などを紹介。

 2つ目はキセルを通じて16世紀にポルトガルからもたらされ、発展した日本独特の喫煙文化を垣間見る。細刻みと呼ばれる髪の毛ほどの細さにタバコの葉を刻んで吸っていたため、日本のキセルの火皿は小さく進化したのが特徴だ。江戸時代後期、キセルの装飾技術は高まりを見せ、かつての刀職人が吸い口と雁首と呼ばれる火皿のすぐ下の部分に見事な銀や金細工を施し次第に所有者の身分を示すほどにまでなった。他にも茶席で愛用されたガラス製のキセルも存在し、煙がキセルを通るのを視覚的に楽しんでいたとされる。

 キセルと共に展示するたばこ盆とは喫煙に必要な火入れ、灰落とし、たばこ入れ、きせるなどを一つにまとめたもので盆形以外に箱形のものも作られるなど、さまざまな意匠が考えられた。3つ目のセクションでは筆立てや持ち運び用筆箱など中国の学術関連品を展示。日本の矢立をはじめとした筆記具との比較を試み、これら一連の展示品を通じて、彫刻、漆塗りなどの装飾技術に置ける日本と中国の交流と影響を検討する。最後にヨーロッパの喫煙器具の展示を通じて、東西の喫煙文化を比較する。

 展示開催中には展示にまつわる講演の開催も予定し、4月10日19時からは「たばこと塩の博物館」(東京都墨田区)の主任学芸員で世界の喫煙文化に関する研究を行っている榊玲子さんが「江戸から明治初期にかけての日本の喫煙文化」と題した英語での講演を予定している。参加申し込みはメール(visitors@liangyimuseum.com)で受け付ける。

 開館時間は10時~18時。要予約。日曜・月曜休館。8月15日まで。

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