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香港のシティスーパー、華潤集団に売却へ 昨年後半から経営環境厳しく

現在も日本の桃のフェアが開催されいてる香港のシティースーパー店頭

現在も日本の桃のフェアが開催されいてる香港のシティースーパー店頭

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 中国政府系「華潤集団(China Resources)」は香港の高級スーパーマーケット「City’super」の株式約65%を3億米ドルで取得することになり、早ければ今週中に買収作業が終了する見通しだ。

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 現在、シティスーパーは荻野正明さんが創業したアパレル企業「三黄集団(Fenix Group)」が60.92%、残りの39.08%は海港城(Harbour City)などを保有する大手デベロッパー「九龍倉集団(The Wharf (Holding))」の親会社で香港有数のコングロマリット「會徳豊(Wheelock and Company)」のトップを務める呉光正(Peter Woo)さんが保有する。

 今回の買収劇は、華潤の傘下企業である「CR Captial」が40%、同社も香港有数のコングロマリットでサンリオとも関係が深い「利豊(Li & Fung)」のトップである馮國經(Victor Fung)と弟の馮國綸(William Fung)の兄弟と華潤と合同で設立した「Asia Food Private Equity」が25%を保有する。つまり、呉光正さんは自動的に保有株を減らすことになる。

 2019年6月に始まった逃亡犯条例改正案で小売業を取り巻く経営環境は悪化し、シティスーパーもその影響を受けていた。売却話は2020年1月に出ていたが、その後、新型コロナウイルスの感染拡大したため、話し合いの進行が遅れていた。

 シティスーパーの歴史をたどると、九龍倉が運営する銅鑼湾(Causeway Bay)にある時代広場(Times Square)は開業当初、現在とは全く異なり客足が鈍く経営状態は良くなかった。そこを打開するために呉光正がコンサルタントとして招聘(しょうへい)したのが1990年代前半に西武百貨店の香港支店長を務めていた故石川正志さん。本社商品部長などを歴任していた石川さんは「Loft」にも携わっており、高級スーパーとライフスタイルを合わせた店(LOG-ONにつながる)を提案。石川さんは西武時代から付き合いのあったフェニックスグループの荻野さんにも話を持ち込み、荻野さんは出資を決めた。フェニックスグループは1986年、当時まだ日本人にはなじみが浅かったプラダの日本を除くアジア市場での独占販売権を締結し、ザ・ペニンシュラに香港1号店を開業したほか、1992年には「アンテプリマ」を立ち上げている。

 呉光正さん、石川正志さん、荻野正明さんの3人が中心となり、さらに西武百貨店の香港支店で働いていた日本人5人と香港人1人が加わり、シティスーパーを1996年12月に立ち上げた。海港城にもシティスーパーが入っているのも九龍倉、呉光正さんとの関係がある。現在は、シティスーパー、LOG-ON、フードコートのcookedDeliの3形態で香港20店舗、上海6店舗、台湾に7店舗の計33店を展開している。

 恵康(Wellcome)などの庶民的な店ばかりだった香港だが、シティスーパーの登場は香港人のライフスタイルに大きな影響を与えた。香港においてシティスーパーは日本における高級路線として知られる「成城石井」かそれ以上の存在だ。シティスーパーの後を追うように「GREAT」「3hreeSixty」「Taste」などの高級スーパーが登場したのはその証といえ、香港にとって大きな話題となっている。

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