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香港に現代ビジュアル・カルチャー美術館「M+」 日本作品・製品も多く収蔵

香港に誕生した現代ビジュアル・カルチャー美術館「M+」の入り口付近

香港に誕生した現代ビジュアル・カルチャー美術館「M+」の入り口付近

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 アジア初の現代ビジュアル・カルチャー美術館「M+」(38 Museum Dr., West Kowloon Cultural District)が11月12日、開館した。計画から10年以上の歳月を経て、世界的に有名な建築事務所、ヘルツォーク&ド・ムーロン(Herzog & de Meuron)とTFPファレルズ(TFP Farrells)、アラップ(Arup)のグローバルチームが設計した6万5000平方メートルのM+ビルは、香港の九龍半島側で最も象徴的なランドマークの一つとして香港の景色の仲間入りを果たした。その建築形態は都市景観の中に開放的に造られ、スカイラインを一望できるルーフガーデンなど、ビクトリア・ハーバーのウオーターフロントを生かしたまちづくりの重要な役割を果たす。

日本から移設が話題のすし店「きよ友」

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 オープニング展示では、2012年から異なる得意分野から、美術館が構築してきたM+所蔵のコレクションから選んだ約1500点の作品を、館内の33のギャラリーとその他の展示スペースにまたがる1万7000平方メートルのスペースに展示する。M+コレクションは、ビジュアルアート作品、映像作品、デザインオブジェクト、建築プロジェクト、アーカイブアイテムなど幅広い。

 1960年代から現在までの香港の変貌と独自の文化を紹介する「Hong Kong: Here and Beyond」(G/Fメインホールギャラリー)では、「Here」「Identities」「Places」「Beyond」と4つの章に分け、1960年代から現在までの香港の変貌に迫る。

 ザハ・ハディドの名前が世界に知られるようになったきっかけは香港の「ピーク」プロジェクト。その際提出された香港を見下ろす丘の上に建設される、豪華な娯楽施設と住宅の複合施設を描いた建築パースも展示している。ハディッドは、敷地の一部を平地にして、そこから採取した石材で山を覆うという過激な提案をした。積み上げられ、鋭角になった4層の居住空間とレジャー空間は、優勝しながらも実現に至ることはなかったが、世界に衝撃を与えた。

 ほかにも香港島の金融街、中環~金鐘辺りのビル群の建築模型や、このエリアのビル群のどの部分が空中回廊でつながっているかを立体模型で紹介したものもある。

 話題の展示の一つとして、「Things, Spaces, Interactions」(2/F東ギャラリー)セクション内に日本の倉俣史朗がデザインした、すしバー全体を展示している。1988年に新橋にオープンしたすし店「きよ友」を、香港への移設に1,500万香港ドル(192万米ドル)をかけ、外観・内観共に再現している。緩やかなカーブを描いた天井、青と赤のラインを配した扉、オレンジ色ののれんなど、日本の伝統とモダンさが同居する空間は、閉店した2004年以降、手付かずの状態で残っていたすし店を経年変化の保存も含めて、内装、家具、外壁、空間ごと香港で多くの人が鑑賞できるように蘇らせ、香港で保存していくことになった。

 日本からの作品は、例えばウオークマンなどのソニー製品はソニービルのファサードの一部と共に展示するほか、1964年東京オリンピックのポスター、1970年大阪万博の象徴として建設された菊竹清訓が手掛けた127メートルのエキスポタワーのジョイント部分や三角の窓なども並ぶ。

 これ以外のセクションでは、元駐日大使でスイスのコレクター、ウリ・シグ(Uli Sigg)の寄贈コレクションを通して1970~2000年代の中国美術を振り返る「M+ Sigg Collection: From Revolution to Globalisation」、アジアの視点から戦後の国際的なビジュアル・アートを語る「Individuals, Networks, Expressions」(2/F南ギャラリー)など、核となる6つのテーマ展を開催している。

 開館時間は10時~18時(金曜は22時まで)。月曜休館。オープン後1年間は、特別展やイベントを除き香港居民は入場無料で入館できるが、事前の予約が必要となる。

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