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香港で巡回展「日本人形展」 節句人形から浄瑠璃人形・フィギュアまで

「節句人形」のセクションに展示された人形の数々

「節句人形」のセクションに展示された人形の数々

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 国際交流基金海外巡回展「日本人形展」が11月24日、香港公園内の「香港ビジュアルアーツセンター」(7A Kennedy Road, Central, Hong Kong)でスタートした。在香港日本国総領事館との共催。

各エリアで発達した庶民の「郷土人形」

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 日本の長い歴史の中で培われてきた人形文化を67体の人形を通じて紹介する企画展で、「節句人形」「美術人形」「庶民の人形」「人形文化の広がり」の4つのセクションに分け、日本における人形の歴史的な奥行きと幅広い造形について紹介する。

 入り口付近に配置した節句人形では、ひな人形の原型ともいわれる赤ちゃんを「守る」役割を負ったのが「天児(あまがつ)」と「這子(ほうこ)」。草や紙で人の形の「人形(ひとがた)」が作られるようになった時代、川に流した紙人形も展示している。日本では古くから季節ごとの祭で神々に感謝し、食を提供する儀式が行われてきたが、17世紀以降は子どもの成長を祈る儀式が多く行われるようになったことが分かる。女の子の成長を祝うひな人形は、地域によって趣も異なるだけでなく、京都では左右が逆になるなど、ひな人形の飾り方にも相違が見られる。男の子の成長を祈願する端午節の桃太郎と金太郎なども展示する。

 美術人形としては、金箔(きんぱく)と顔料を用いて作られた色彩が際立つ「嵯峨人形」を展示。その人形の多くは小柄で約10センチ四方の空間にきめ細やかさが凝縮されているのが特徴。ほかにも、同エリアには木彫りの一刀彫の豪快さ、繊細で華やかな彩色を施す両面を持ち合わせる「奈良人形」や主に江戸時代に発展した観賞用として親しまれる「衣装人形」などを並べる。

 風土や文化を反映した各エリアで発達した庶民の「郷土人形」になると、その材質も木や土、紙を使った張り子などに変化してくる。南九州や沖縄エリアの人形にはその色合いは服の柄などに中国の影響を感じられるものがあるほか、静岡の人形として駿府の城下町で生まれた「静岡姉さま」は、日本髪を結い上げ、江戸千代紙を着付けたあでやかな後姿で並ぶ。東北では人形は「こけし」となって庶民の生活に結び付き、高崎では「だるま」として親しまれた。福島の郷土玩具として現在では寅(とら)などの干支(えと)の動物などの演技物としての方が見る機会も多い「三春張子」は、躍動感ありのびのびとした動きがある姿を特徴とするが、木型を用いていることからも同じような空気を醸す人形に仕上がっている。

 「人形文化の広がり」として紹介する「押絵羽子板」は主に歌舞伎を題材とし、羽板の上に半立体の人形を貼り付けるが、独特の衣装などで板の限られたスペースにダイナミックに表現しているのが分かる。併せて会場には過去に使われたこともある浄瑠璃人形も展示。人形は日米の交流にも大きな意味を残した出来事もあったことを紹介する。1927年、日本へ親善のために贈られたいわゆる「青い目の人形」は日本文化にも新しい風を吹き込んだとされ、そのお返しとして日本は58体の人形を制作し米国に送ったが、その際に採用された「市松人形」を展示することで、海外とのつながりにも「人形」が役割を果たしてきたことが分かる。

 レクチャーホールではワークショップも開催。12月3日はオンライン、日本の「みやぎ蔵王こけし館」とつなぎながらこけしの絵付けを体験するイベントを企画した。同10日17時~18時には、バンダイナムコアジア社の志賀祐太朗さんが「ガンプラの歴史と進化」と題し、広東語通訳を入れて日本語で講演予定。参加無料。

 開館時間は10時~19時(土曜・日曜は20時まで)。火曜休館。入館無料。12月11日まで。

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