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WTO、「メード・イン・香港」は「メード・イン・香港」

ほぼ日常の生活に戻りつつある街並み

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 世界貿易機関(WTO)の紛争処理小委員会は香港製品をアメリカが輸入する際、「Made in Hong Kong」ではなく「Made in China」と表示することを義務付けているのは国際貿易ルール違反と認定するという報告書を公表した。香港と中国本土の経済の一体化が叫ばれているが、ここでは香港という独自性が国際機関に認められる形となった。

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 香港は、五輪やサッカーなどでは中国ではなく独自の地域にある協会ということで代表を組んで参加しているように、WTOへの独自の経済地域、関税区として加盟している。アメリカもずっと香港を中国とは別の経済地域として扱ってきた。

 しかし、2019年に逃亡犯条例改正案に関して大規模なデモが発生。さらに2020年6月に香港国家安全維持法が施行されたことを受け、アメリカ上下両院は香港への優遇措置を停止する香港自治法を可決。当時のドナルド・トランプ大統領は同年7月14日に署名した。2020年8月、同年9月26日以降にアメリカに入るものは中国原産として表示することを求めるという官報が出された。表記に違反した場合は10%の追加関税が徴収されるものだった。これに対して香港政府は、アメリカはほかの地域名の表示を認めているので、この措置はアンフェアだとWTOに撤回を訴えていた。

 香港の企業は、80年代から中国に工場を構え始めたが、香港で製造されているものもあり、香港製は中国製よりも信頼されていた。中国製に表記が変わると売上に影響がでるのは避けられなくなっていた。

 小委員会は、アメリカが措置の根拠としたWTO協定の適用除外となる「国際関係の緊急事態」には当たらないことから、措置はWTO協定に違反するという判断を下した。これは中国ではなく香港内で頑張っている企業に対して勇気づけられる裁定となった。

 香港政府の商務及経済発展局(Commerce and Economic Development Bureau)の丘應樺(Algernon Yau)局長は「1国2制度の下、香港には特別な地位が認められている。中国製と書かれるのは、消費者に混乱を引き起こし、結果的に消費者と製造者の両方に良くない」とWTOの判断を歓迎したほか、アメリカ政府に対してはWTOの判断に従い、同措置の撤回を求めた。一方、アメリカ通商代表部(USTR)は「WTOの判断を拒否する。安全保障問題に関することについてはWTOに委ねず、表示義務は撤回しない」とコメントする。

 香港側の懸念は、アメリカがWTOの判断に不服として上訴する場合だ。60日以内に控訴可能となっているが、審議する上級委員会は、委員の選任についてアメリカの反対したことで任命できず審理ができない状況にあり、製造元の最終判断が宙に浮く可能性があるため。今後のアメリカの判断が注目される。

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