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香港でJR九州「ななつ星in九州」デザイナー水戸岡鋭治さん海外初講演

香港で初めての海外講演を行った水戸岡鋭治さん

香港で初めての海外講演を行った水戸岡鋭治さん

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 在香港日本国総領事館は10月25日、アジアソサエティ香港で、JR九州クルーズトレイン「ななつ星 in 九州」や九州新幹線のデザインで知られるデザイナー水戸岡鋭治さんによる講演会「Design for the Public Good」を開催した。総領事館と地元コミュニティーが開催中の「日本秋祭 in 香港-魅力再発見-」の一つ。日本各地の電車とその関連施設を中心にデザインを手掛けてきた水戸岡さんは1988年から約30年間にわたりJR九州の車両をデザインし、特急列車「ソニック」、「ゆふいんの森」などの人気作品も多い。

会場内には過去作品のパネルや本などを展示

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 幼少のころから絵を描くのが好きで将来は必ず絵を描く仕事に就きたいと夢見ていた水戸岡さんは、百科事典に掲載される動植物の解説イラストや不動産広告のイラストレーターとして経験を積んだ後、家具や車両などをデザインする工業デザイナーとして活躍の場を広げていったという。百科事典を描くために身につけた色、形などの表現が現在の車両デザインの鮮やかさや繊細なフォルムに生かされているという。1992年に運行開始したJR九州「つばめ」(787系特急)が今までにない斬新なコンセプトだとしてヒットし、脚光を浴び始めるようになった。

 水戸岡さんのデザインする車両は、これまで業界内ではタブーとされてきた素材を使っていることでも知られる。博多~由布院間、博多~別府間を走る「ゆふいんの森」では、客席の床をはじめ、サロンルームの壁や天井、テーブルなど至る箇所にむくの木が採用されている。スライスして0.2ミリメートルほどの薄さに伸ばしたむくの木をアルミの上に貼るという難燃化加工を施すことで、車両の厳しい安全基準をクリアした。「誰もやっていないことに挑戦する。お客さまにぬくもりを感じてもらえるよう、可能な限り木を使いたい」と水戸岡さんは話す。

 2013年に運行を開始した九州内を巡る寝台列車「ななつ星in九州」。イギリスの豪華寝台列車オリエントエクスプレスをイメージして作られた同車は、鉄道技術を教えてもらったイギリスに恩返しをする意味も込めて制作したという。人気、価格ともに最も高いのは、列車最後尾にあるDXスイートルーム。巨大な窓からゆっくりと景色が楽しめるのが売りのこの部屋は、「30億の額縁」というテーマをイメージして造られ、予約倍率は数百倍。車両だけでなくスタッフのユニホームも水戸岡さんによるものだ。「決して特別ではなく、誰が着ても似合うものを作った。動きやすく、信頼感のあるデザイン」だと話す。

 「かつては経営不振だったJR九州だが、利益率を下げてでも質の高いものを提供しようという姿勢を崩さず前進した結果、支持してくださるお客さまが増えファンも定着した。黒字になり上場も果たすことができた。もともとは豪華車両でなく、誰もが楽しむことができる車両を作りたいとは思ってきたが、特に、ななつ星を作ったことで、JR九州が多くの人に知られるようになりうれしかった。自分の中では印象的なプロジェクト」と話す。

 同講演で水戸岡さんは「私の仕事は作品を通して自分の思いを表現することではなく、お客さまのニーズに合ったものを作り上げていくこと。自分はアーティストではなくデザイナーだ。日本の伝統的なデザインと職人技を取り入れながら、これからも質の高いものを作ってきたい」と展望を話した。

 会場にはパネルで水戸岡さんが手掛けた作品が紹介され、関連本なども設置されている。会館時間は11時~18時。10月26日まで。

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