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水墨画 福山一光さん 香港で初の海外個展

個展のオープニングにあわせ来港した福山さん

個展のオープニングにあわせ来港した福山さん

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 湾仔のアートギャラリー「Our Gallery」(UG 10, CC WU Building, 302-308 Hennessy Road, Hong Kong)で1月14日、水墨画の福山一光(ふくやまいっこう)さんの初の海外個展「書僧・福山一光個展」がスタートした。

水墨画で使用する墨。ほとんどの紙と墨は中国のものを使用している。清の時代に出来たものも

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 福山一光(ふくやまいっこう)さんは、岩手県一関市出身。1974年、曹洞宗の寺院の長男として生まれた。両親も兄弟も絵を描くことが好きで、寺という家柄、工芸品に触れる機会も多かったことから、自然と芸術に関心を持つ環境で育った。高校卒業後は東京藝術大学美術学部に進学し、日本画を専攻。さらに、博士課程に合格した後は修行のために1年休学し、福井県の永平寺で修行した後復学したという経緯を持つ。

 今回の個展は、福山さんが親しくしている東京のギャラリー「KAMIYA ART」と、香港・湾仔の「Our Gallery」とのコラボレーションよって実現したもの。「日本と香港それぞれの芸術作品を、お互いの国で楽しめる場を作る」という趣旨のもと企画した一回目の展示会となる。会場では15点の作品を展示する。

 日本画を専攻した福山さんが水墨画を描くようになったきっかけは、日本画の下書きにあるという。日本画の制作では下書きの際に墨を使うことがあるが、墨で描くラフなスタイルを実際の制作にも生かせないだろうかと思ったことが、水墨画を始めるきっかけという。大学では水墨画の専攻はなかったため、手法は全て見よう見まねで身に付けた。

 一般的に水墨画は、紙に墨がにじまないよう「膠液(にかわえき)」という水溶液を用いて下絵を描くが、福山さんの作品はこの処理をしていないのが特徴。膠液は墨のにじみ防止になる一方で作品を長持ちさせない有害な成分も入っている。膠液を使わないことで描きにくくなるが、劣化を防ぎ奥行きのある作品が生まれる。「4年ほど前、水墨画家としてちょうど煮詰まっていたときに、ギャラリーから膠液を使わないで描いてみてほしいという提案を受けた。KAMIYA ARTは紙屋としても画材料を取り扱うプロフェッショナル。最初は思い通りにいかず本当に描きにくかったが、この出会いが転機となり今ではこれが自分の手法となっている」と福山さん。

 展示作品は、山や木などの自然がテーマになっているものが多い。福山さんは「こどもの頃に見た田舎の風景や、永平寺での修行のときの記憶が頭の片隅に残っている。そういうものを形にしてみたいと思いながら制作に取り組んでいる」と話す。150点以上の水墨画を描いてきた福山さんが思い入れのある作品は2013年の「雪の烏森(からすもり)」(サイズ=75.5センチ×185.5センチ)。製作開始から完成までに一カ月を要し、初めて挑んだ大作という。

 福山さんは「この作品はこういうふうに見てほしい、という希望はない。自分の表現した作品を見て、いろいろなことを想像し楽しんでもらえたらうれしい。開催期間も長いので多くの人に見てもらえたら」と来場を呼び掛ける。

 開催時間は、火曜~土曜=12時30分~19時、日曜=13時~17時。月曜休。4月1日まで。

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