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HSBC、恒生銀行を非公開化へ  Hang Seng Indexは維持

HSBCによる完全子会社化が発表された恒生銀行

HSBCによる完全子会社化が発表された恒生銀行

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 香港と上海に起源を持ち、現在はロンドンに本社を構える香港上海●豊銀行(HSBC)は10月9日、傘下の地場銀行である恒生銀行(Hang Seng Bank)を非公開化する計画を発表した。HSBCは恒生銀行株の62.14%を保有しているが、10月8日の恒生銀行株の終値に30.3%のプレミアを付け1株155香港ドルで評価し、計1,061億香港ドルを投じて未保有株を子会社と共同で買うことで完全子会社化する。

恒生インデックスなどはそのまま維持される見通し

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 HSBCは、1865年3月3日に中環(Central)にある皇后大道1号(1 Queen’s Road)、つまり現在の香港のHSBCがあるところで創業し、その1カ月後に上海にもオフィスを構えたのが始まり。主な理由は、アヘンを中心に清朝との貿易おいてもうけたお金を、イギリス本国に送金するという銀行業務の需要が拡大していたことに端を発する。こういった経緯から、これまで基本的には、香港にある外国企業や香港在住外国人向けにビジネスを展開してきた。

 一方、恒生銀行は1933年に何善衡、林炳炎、梁植偉らが創業した銀行で、その背景から、香港にある香港企業や香港人を対象にビジネスをすることが多かった。つまり、香港の中小企業が融資などを受けていた。

 しかし、1965年1月に華人系資本の明徳銀行などが取り付け騒ぎを起こしたことをきっかけに、当時、香港で2番目に資産が多かった恒生銀行にも波及し、2億香港ドル以上の預金が引き出され経営危機に陥った。

 そこでHSBCが恒生銀行株51%を保有する形で救済し、恒生銀行は生き延びた。その後、HSBCは現在のように6割を超える保有率にまで引き上げたが、HSBC傘下となり財政基盤が強固になった恒生銀行は業務を拡大してきた。

 今回の組織再編について、HSBCは「香港への重要な投資」としているが、恒生銀行は香港や中国本土の不動産市場に対するエクスポージャーが高めだった。今年7月に公表した中間決算によると、商業用不動産市況の低迷で不良債権比率は、2024年12月末は6.12%だったが2025年6月末には6.69%に増加傾向を示していたほか、保有不動産の売却も困難な状況に陥っていた。HSBCとしては完全子会社化することで不良債権処理を加速させたい考えだ。

 9月には、HSBCの香港トップだった林慧虹(Luanne Lim)CEOが10月に入って恒生銀行の行政総裁に就き、HSBCのパーソナルバンキングなどの部門の責任者だった伍楊玉如(Maggie Ng)さんがHSBC香港のCEOになることが決定している。これも経営のテコ入れの一環とされる。

 恒生銀行は非公開化されるが、10月9日にHSBCとの合同で発表したステートメントによると「恒生銀行と顧客との日常的なやり取りは変わることがない」と発表している。恒生銀行の口座を持っている約400万人は、これまでと同様のサービスを受けられる。加えて、HSBCのサービスにもアクセスできるようになるという。

 香港の株式市場の全体の動きを表す株式指数を「恒生指数(Hang Seng Index)」といい、香港人にとって「経済の体温計」とも言われる存在。恒生銀行の関連会社が開発した指数として知られている。香港市場の時価総額の約7割をカバーしており、主要企業の株価動向を反映し、恒生指数の上昇・下落は「香港経済の好調・不調を示すサイン」として広く認識され、ニュースやメディアでは、日々の指数変動がトップニュースとして報道される。

 恒生銀行は香港証券取引所から上場廃止となるが、銀行業務やブランドは維持される。今回の非公開化は時代の変化を象徴する出来事として香港社会でも大きく話題になっている。

 ●=さんずいに匚に隹

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