
香港から発送される800米ドル(約11万6,000円)以下の小口輸入品に対して関税を免除する措置(De minimis/デミニミス・ルール)が5月2日で終了した。
香港郵政は、物品を含まない郵便物は対象外としながら、船便および航空便のアメリカ向け小包の発送を停止
中国本土と同様の措置としてトランプ大統領が4月2日に同措置を廃止する大統領令へ署名したことを受けたもので、中国本土と同様に5月2日午前0時1分に終了した。小口郵便の数量は多いものの、単価が低いことから取引総額的は香港経済に決定的なダメージを与えるものではない。しかし、物流のハブとして発展してきた香港にとって、自由貿易を未来を考える上で無視はできない状況にあるとの見方が強まっている。
デミニミス・ルールが適用されなくなった理由として、トランプ政権は「中国本土に拠点を持つ多くの荷主が、この措置を悪用して合成麻薬フェンタニルなどの違法薬物の原料などを隠して輸出をしているほか、摘発も免れているため」としている。
今後は、国際郵便網を通じて送られた800米ドル以下の輸出品については、価格の120%または、荷物1個当たり100米ドルの関税が適用され、6月1日以降は200米ドルに引き上げられる。
元々は、価格の30%または荷物1個当たり25ドル米の関税が適用され、6月1日以降は1個当たり50米ドルの予定だったが、米中の関税引き上げ合戦に比例して税率も上昇した。国際郵便網を通さずに発送される800米ドル以下の荷物の場合にも、適用可能な全ての関税が課されることになる。
なお、商品価値が100米ドル以下の贈答品、商品価値が200米ドル以下で個人または家庭向けの商品について、アメリカに入国する人が自ら持ち運ぶ場合は、従来通り、デミニミス・ルールが適用される。
この措置を受けて香港郵政(Hong Kong Post)は、物品を含まない書類などの郵便物は対象外としながらも、4月16日から船便を、同月27日からは航空便のアメリカ向け小包の発送を停止。発送停止日が前倒しされたのは、アメリカまでの送り先に届くまでの時間を計算した結果と言える。アメリカに在住している香港人も多く、例えば、香港の家族はアメリカに留学中の子どもに荷物を送ることが事実上、できなくなった。適用停止は、ビジネスだけでなく個人の生活にまで影響を与えている。
香港政府は、適用停止は理不尽な措置だとして、「関税の徴収を代行して行うことはしない」と発表した。しかし、「対アメリカへの報復措置はとらず、フリーポート(外国商品の輸出入に関税をかけない)を堅持すること」を表明。保護主義に走るアメリカに対抗して、自由貿易を推進することを対外的にアピールし、物流のハブとして信用を、より改善しようとしている。
このルールの最大の恩恵を受けてきたのは、中国の大手アパレル通販サイト「希音(SHEIN)」と「Temu」。免税のルートでアメリカに入る荷物は2024年で約14億個に達しているが、90%にデミニミス・ルールが適用され、60%が中国から発送されたもの。この措置を受けて4月25日、両社は値上げに踏み切ったが、SHEINの商品の中では300%以上値上げした商品もあるという。
大統領令が発令した90日後、アメリカの関係当局はこの措置についての報告を大統領に行うことになっているが、報告内容については、まだ適用中のマカオに対して適用停止をするかどうかが含まれる見込みだ。
カナダのモントリオールに本部を構える国際空港評議会(ACI)が4月14日、2024年の世界の航空貨物取扱量ランキングを発表し、1位は香港国際空港(HKIA)となったが、2025年はトップを維持できるかどうかは非常に不透明な状況になっている。