学ぶ・知る

香港政府、プリペイド型SIM保有上限を1人3枚に 修正案を立法会へ

香港の街中で販売されているSIMカード

香港の街中で販売されているSIMカード

  • 3

  •  

 香港政府は7月8日、香港内で使うスマートフォン用のプリペイド型のSIMカードの上限について、1人10枚から3枚に制限する修正案を2026年の立法会に提出する考えを明らかにした。増加している電話詐欺やフィッシングメールへの対応が背景にある。

[広告]

 香港のプリペイド用のSIMカードは、以前は自由に何枚でも購入することができたが、2022年3月から実名で登録(名前、生年月日、IDカード番号)する必要があり、購入枚数も1人10枚以下に制限された。

 導入した理由について香港政府は、プリペイド型は匿名で購入できることから「犯罪防止のため」としている。2019年に発生した大規模デモではデモ隊がスマートフォンを巧みに利用して活動したことがあったため、それに歯止めをかけようとした可能性がうかがえるほか、香港は以前から電話セールスが少なくなく、日に何度も電話がかかってくる状況だった。その中には電話詐欺も含まれていたことから法制化した背景がある。

 香港政府によると、登録システムを導入された2023年3月から2025年1月までのプリペイドカードの登録について、必要な情報を提供しなかったことで申請を却下した件数が410万件あったことを明らかにした。

 一方、香港警察によると、2024年の電話詐欺事件は9204件、被害総額は29億1,000万香港ドルに達した。香港警察は2022年に疑わしい電話は利用者に警告する機能を備えるアプリ「防騙視伏App」を開発し、これまでに87万4000回ダウンロードされた。2024年末までに9万件以上の不審電話と60万件以上の不審なウェブサイトに関して警告したことを公表している。現在も、香港市民は日に何回ものセールス電話を受けているのが実情で、日常生活でちょっとしたストレスになっている。

 香港資訊科技商會の方保僑名誉会長は「現状では、当局が転売を防ぐことができないほか、IDカードの情報が何らかの形で漏えいし、それを利用してプリペイドカードを作られている可能性があり、傍受する能力も限られているため、電話詐欺が横行しているのが現状」とコメントする。

 修正案が立法会を通過した場合、プリペイドカード開設のために個人情報を他人へ教えたり売買したり、他人の携帯電話を借りたりする行為は犯罪となる。もし10件以上のプリペイドカードを保有している場合は、犯罪の実行またはほう助する意図があると推定される可能性がある。3枚としたのは、2022年3月以降の契約状況などを見ると、90%が1人当たり3枚未満であることから。違反した場合は最高で2万5,000香港ドルの罰金か禁錮12カ月となる。

 修正案の影響を受けると思われるのがタクシードライバーだ。香港の場合、タクシードライバー1人が複数個のスマートフォンを持ち、それを車のインパネ周りに置いて営業活動しているケースが少なくない。タクシードライバーは、法律上は白タクに当たる「UBER」や燃料費の高騰に苦しんでいる上、修正案は新たな減収要因となりかねないことから、より厳しい運営を強いられる可能性が高い。

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース