香港全体が芸術に染まる「Art March(芸術三月)」が佳境を迎える中、メインイベントの一つである「アート・バーゼル香港」が3月27日、湾仔の香港コンベンション&エキシビションセンター(HKCEC)で開幕した。海外メディアの報道やギャラリー関係者によると、一般公開に先駆けて開催された招待制内覧会では、既に数百万ドル規模の取引も報告されるなど、活発な動きが見られている。
アートバーゼルで展開されるデジタル特化型プロジェクト「Zero 10」
アート・バーゼルは1970年にスイス・バーゼルで始まった世界最大級の近現代アートフェアで、現在はバーゼル、マイアミビーチ、香港、パリ、カタールで開催されている。香港展はアジア市場の中核を担う存在として定着しており、今回は41の国・地域から240のギャラリーが参加し、その過半数をアジア太平洋地域が占める。会場内では香港がベースとする英語や広東語だけでなく、中国本土の普通話や韓国語、タイ語などアジア各国の言語が飛び交っている。
今年はプログラムを大幅に拡充し、新たな視点によるキュレーションに加え、香港の文化機関との連携を強化することで、街全体を巻き込んだ展開を打ち出している。
会場の中核を担うのが、大型インスタレーションを紹介する「エンカウンターズ」部門。今年は森美術館館長として国際的に知られる片岡真実さんが率いるキュレーションチームが手がけた。アジアで共有される宇宙観「五大元素(空・水・火・風・地)」をテーマに、日本人アーティスト安永正臣さんの「火」をテーマにした釉薬陶による造形など12作品を展開。同部門は会場外でも展開し、パシフィックプレイスではクリスティーン・サン・キムさんによるデジタルアニメーション作品「A String of Echo Traps」(2022-2026年)を公開している。
各ギャラリーのブース内でテーマ展示を行う「キャビネット」部門では35のプロジェクトを展開。うち23の企画が、アジア太平洋地域の歴史的な作家や現代アーティストに焦点を当てたもので、戦争の記憶をテーマに作品を制作してきたベトナムの現代美術家ディン・Q・レさんや、タイのモダンアート界を切り開いた先駆者、タン・チャンの抽象絵画など、幅広く作家を紹介する。
さらに今年は、デジタル時代の芸術に特化した新たなグローバルプロジェクト「Zero 10」が、昨年末のマイアミでの初披露に続き、アジアで初めて登場した。例えば、自動絵画装置(ロボティックアーム)がキャンバスに直接描き、アートが生み出される過程を見ることができる作品や、集合写真のように映し出された映像から、協調性、好奇心、共感性などを数値化してデジタルスクリーンに表示させ、人間の資質や役割を可視化するインスタレーション作品など、従来のアートフェアの枠組みを拡張する試みに多くの来場者が関心を寄せている。
会場内外では一般無料公開プログラムも展開し、映像作品を上映する「フィルム(Film)」やトークプログラム「カンバセーションズ(Conversations)」などを通じて、鑑賞にとどまらない体験型プログラムを提供。「アート・バーゼルショップ」では、フェアのために制作された限定アイテムやコラボレーショングッズを販売する。
会期中、香港各所でも関連イベントを行う。大館(Tai Kwun)ではライブパフォーマンスや音楽イベントを組み合わせた「アーティストナイト」を開催するほか、M+では外壁を活用した大型映像作品を上映するなど、都市全体を巻き込んだ展開を繰り広げる。
今年から、香港や周辺地域のアート機関との連携強化を目的とした取り組み「フレンズ・オブ・アート・バーゼル香港」を導入し、アジア全域の文化機関とのネットワーク強化を図る。
開催時間は、27日・28日=14時~20時、29日=12時~18時。今月29日まで。