
日本の閣議に相当する行政会議は4月8日、北部都会区(Northern Metropolis)の大動脈とも言えるMTR北環線(Northan Link)の事業計画案を批准したことを発表した。これにより、正式に路線の建設工事が動き出し、2034年の完成を目指す。
北部都会区は2021年に当時の林鄭月娥(Carrie Lam)行政長官による施政方針演説で示された計画で、その後、政府内で検討が進められ、「北部都会区行動綱領2023(Northan Metropolis Action Agenda 2023)」として詳細な計画が策定された。中国政府は1国2制度を維持しつつも、香港、マカオ、広東省(9都市)で巨大な経済圏を作る「粤港澳大湾区(Guangdong-Hong Kong-Macao Greater Bay Area)」の構想を掲げているが、北部都会区は香港側の中心地となる場所でもある。
具体的には、元朗(Yuen Long)周辺を高度専門サービスと物流のハブ、新田(San Tin)周辺をイノベーション科学技術、上水(Sheung Shui)や古洞(Kwu Tung)周辺を貿易と工業、沙頭角(Sha Tau Kok)をレクリエーション・観光という4つのエリアに分けて行う大規模な開発となる。
香港の面積の約3分の1に当たる3万ヘクタールに50万戸の住宅を建設し、完成後は香港の人口の3分の1に当たる250万人の人口、50万人分の雇用を創出する。完成後は、「南金融、北創科(South-North dual engine〈finance-I&T〉)」、つまり、香港島を中心としてところを金融のハブ、今回の都会区を科学技術などのイノベーションのハブにしたいというコンセプトに基づく。
同エリアの鉄道の大動脈となるのが北環線で、2034年の竣工を目指す。長年、このエリアに鉄道の敷設するアイデアはあったが、2014年に香港政府がまとめた「鉄路発展策略2014(Railway Development Strategy 2014)」という計画を基本としている。
具体的には、古洞(Kwu Tung)駅を始発・終点とし、新田(San Tin)駅、牛潭尾(Ngau Tam Mei )駅、凹頭(Au Tau )駅を通過して、屯馬線(Tuen Ma Line)の錦上路(Kam Sheung Road)駅とをつなぐ全長10.7キロの路線となる。所要時間は12分を想定。この2駅の間には、「新界環廻公路(New Territories Circular Road)」と呼ばれる高速道路9號幹線のほか、「青山公路米埔段(Castle Peak Road Mai Po)」などの一般道があるが、混雑状況によっては60~80分かかる時もあり、鉄道の開設により大幅な時間短縮が実現するとしている。
既に古洞駅は2027年の供用開始を目指して2023年9月、先行して工事を開始している。理由として、同駅は北環線の始発・終着駅と書いたが、落馬洲支線(Lok Ma Chau Spur Line)の途中駅にもなるためで、上水(Sheung Shui)駅とは所要時間3分で結ばれる。
香港島で言えば、金鐘駅(Admiralty Station)のように乗換駅になるため、北環線の中核駅になる駅で、駅周辺にはショッピングエリアの建設やLRTの敷設も計画されている。
MTRによれば、「北環線、屯馬線、東鉄線、落馬洲支線につなげると、九龍と新界(New Territories)の環状線のような形になる」としており、香港内の移動がより容易になることに期待がかかる。