
中環の文化複合施設「大館(Tai Kwun)」で現在、市民参加型アートイベント「Open the Box 2025: Bloom of Light」が開催されている。次世代の美術館のあり方を模索する試みとして、単なる鑑賞型ではなく、来館者自らがアート作品の共同制作者となる体験型の取り組みを採用したアートイベントとなっている。
大館のアートイベント「Open the Box 2025: Bloom of Light」を手がける大巻伸嗣さん
同展は、2023年に初開催し話題を呼んだ「Open the Box」シリーズの第2弾。「Open the Box」では、普段はキュレーターやアーティスト専用とされるギャラリー空間を一般の来館者に開放する。来館者が「アーティスト」となり自ら作品制作に参加するユニークな取り組みが特徴だ。
2023年に開催された「Open the Box」シリーズの第1弾のテーマは「Home Sweet Home」で、来館者が家を自由に設計し、段ボールを使ってミニチュアの住宅をギャラリー内に組み立てた。出来上がった家は会場に展示したミニチュアタウンの一部となり、他の参加者の家々と絡み合いながら一つのコミュニティーを形成し、「暮らし」や「つながり」の体験を創出するプロジェクトだった。
今回のテーマは「Bloom of Light」。日本人アーティスト大巻伸嗣さんの代表作「Echoes Infinity」シリーズの一部として展開する同プロジェクトでは、来館者が花のモチーフを自由に創作し、会場の壁面に配置していく。
来館者がそれぞれの花を創作し配置することで、個人の記憶や感情が折り重なるようにして、空間が時間とともに進化していくアート作品になる。香港、アジア、世界中の多様な文化的視点をたたえる同作品は、「人が内に持つ光」と「人とのつながりからうまれる光」を捉え、人々が生み出す「集合的な光」を描き出すという。
同展を手がける大巻さんは、影や闇といった、身近であるが意識から外れてしまうもの、対立する価値観の間に広がる境界閾、刻々と変化する社会の中で失われてゆくマイノリティーなどに焦点を当て、「存在」とは何かをテーマに制作活動を展開する現代美術家。
大巻さんは「空間」「時間」「重力」「記憶」をキーワードとして、「多種多様な素材や手法を用いて、曖昧で捉えどころのない『存在』に迫るための身体的時空間の創出を試みている」という。日本の伝統的な素材や技法も生かしながら、現代の社会課題にも鋭く切り込む作風で知られる。
同展では、7月5日~27日の「共同制作期間」と、7月29日~8月3日の「一般公開期間」を設けている。「共同制作期間」は材料費込みの入場チケットを販売し、「一般公開期間」は入場無料となる。
共同制作期間の開館時間は14時~18時(火曜~金曜)、11時~19時(土曜・日曜)。月曜休館。入場料は180香港ドル(材料パック1つと最大2人分の入場チケット)と240香港ドル(材料パック1つと最大3人分の入場チケット)の2種類。一般公開期間の開館時間は11時~19時。入場無料。8月3日まで。