香港で毎年100万人を動員することで知られるブックフェア「香港書展(Hong Kong Book Fair)」が7月16日、湾仔にある香港コンベンション&エキシビションセンター(1 Harbour Road, Wan Chai, Hong Kong、Tel.2584 4333)で開幕した。今年で26回目の開催。
香港では学校が年度末を終え長い夏休みに入ると多種多様な展示会が開かれるが、その中でも最大規模を誇るのが同フェアである。今年は33カ国から過去最多の580の出展者がブースを構え、ハンガリー、インド、ベトナムなどが初出展となった。会期中は610のイベントが開かれる予定。会場では1~2割引きでの販売、7冊100ドルのセット、300ドル以上買えばエコバッグ進呈など、香港人マインドを刺激する販売促進活動をしていることが人気の理由だ。文具や教育を主眼とした玩具なども売られている。
書籍販売大手Page Oneのスーパーバイザーカロンさんは「正社員、アルバイト合わせて約50人体制でブースの管理をし、売り上げは前年比5~10%増を見込んでいる」と話す。「マーケティングと投資関係の売れ行きが良く、ここ2、3年インターネットで得られる知識に限界を感じているのか、本に回帰する人が増えていると思う」とも。
一方、出版大手で「コスモポリタン」「エル」「カー&ドライバー」などの雑誌を発行する南華早報集團(SCMP Group)のブースの担当者は「雑誌の販売はしない。より重要なのは安定な収益を見込める定期購読者を増やすこと。申し込んだ人に何らかの特典を付けることで購読者の増加を狙っている」と出展理由を話す。
会場に来ていた17歳の学生、レオ・イップさんは「初めて来たが、歴史の本などを4冊買った」という。予算としていた300香港ドルで、4冊をまとめ買いしたという。20代の香港人カップルは「インターネットが発達した影響なのか分からないが、内容の質が昔より下がっている気がする」と本音を漏らす。
教育関連商品のブースで子どもをワークショップに参加させていたエミリー・ジュンさんは、大きなバッグを2つ抱えながら「子どもは8歳で英語の教材を買った」と話し、特に予算は決めずに、「子どもへの教育にはお金をいとわない」と話した。友人と2人で来ていた30代の女性、ソキ・ソーさんは「友人の子どもに英語のテキストブックをプレゼントとして買った。ネットで学ぶよりペンを使って書くことが、勉強をする上で大事だと思うから」とも。
日本パビリオンは兵庫県、岐阜県、北海道帯広市が初出展するほか、昨年に引き続き和歌山、新潟、また大手出版社のKADOKAWAなどがブースを構える。兵庫は5歳から24歳まで宝塚市に住んでいた手塚治虫にスポットを当てた。同県産業労働部国際局国際経済課の山谷公男経済交流班主査は「鉄腕アトムや鉄人28号を入り口として兵庫を知ってもらい、神戸のような大都市のみならずその一歩先の街、例えば姫路などの知名度を上げたい」と目的を語った。
帯広市商工観光部観光課の尾澤琴也課長補佐は「帯広に来る外国人の数は台湾に次いで香港が第2位。世界で唯一のばんえい競馬があり、アニメ『銀の匙 Silver Spoon』が香港で放映されていることもあって反応はなかなか」と手応えを感じているようだ。
同展示会は長年BtoCのイベントとして定着してきたが、ここ5年は「版権洽談区/ Copyright Exchange Lounge」というブースを設置するなど、積極的なビジネス交流も促している。
開催時間は10時~22時(17・18日は24時ごろまで、最終日は9時~17時)。入場料は、大人=25香港ドル、子ども=10香港ドル(3歳以下無料)。講演会は一部無料。今月21日まで。