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香港の行政長官が2016年度施政方針を公表 選挙制度改革は縮小傾向

香港市民が最も注目しているのが住宅問題

香港市民が最も注目しているのが住宅問題

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 香港の梁振英(りょうしんえい)行政長官が1月13日、香港特別行政区立法会で2016年度実施政策についての方針演説を行った。

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 この日の演説で梁長官は、「経済革新」「生活環境の改善」「調和のとれた社会の促進」「繁栄の共有」の4テーマを掲げ、住宅価格高騰、社会的弱者の増加など香港の特徴ともいえる格差社会の課題解決を目指す方針を示した。

 昨年までの大きな争点だった選挙制度改革は、本年度の重点項目には入れず、施政綱領でも最終章の第8章で言及するなど勢いを落とした形となった。

 香港大学民意研究計画の事前調査によると、香港市民が最も注目しているのが住宅問題という。梁長官は、今後5年間に公営住宅について賃貸型7万6700戸と販売型の2万400戸を供給するとした。本年度は、下半期に新蒲崗(San Po Kong)で860戸の住宅販売するのみにとどまった。このほか、古洞北(Kwu Tong North)、粉嶺北(Fanling North)、東涌(Tung Chung)、洪水橋(Hung Shui Kiu)、元朗南(Yuen Long South)などで住宅、商業施設とほかの使用用途について研究を行うとしている。

 経済については、「香港海運港口局(Hong Kong Maritime and Port Board)」を設立し、人材育成、マーケティング、リサーチなどを面強化させることで港湾事業の競争力を高める一方、観光事業にさらに力を入れ、大型イベントのオーガナイズを行うとした。このほか、5億香港ドルの「農業持続発展基金(Sustainable Agricultural Development)」を創設し農業の発展支援を行うという。

 技術革新については、香港内外の優秀な機構と提携し付加価値の高い産業の「再工業化」を図るほか、蓮塘(Lingtang)、香園圍(Heung Yuen Wai)付近で科学園や工業団地の建設を推進する。このほか、ベンチャー企業支援として20億香港ドルの基金創設を掲げ、3年以内に無料Wi-Fiエリアを2倍にし、政府関係施設内のWi-Fiアクセススピードも2倍にするとした。

 低所得者と高齢化社会問題につては、基金の創設、特殊児童向けの特別トレーニングの実施、両親が離婚した子どもへの必要なサービス提供、2年以内に240の老後施設と450のリハビリ施設を増やすとした。

 教育については、経済的に困窮している家庭の子どもに対し「關愛基金」を活用して幼稚園入園に関する一時金を提供するほか、20118年までに幼稚園の無料化を実現させたい考えを示した。加えて8億香港ドルの「資優教育基金(Gifted Education Fund)」を創設し、10から18歳の優秀な学生への資金援助を行うという。

 医療については、医師、看護師、病床数不足が招く医療レベルの低下が懸念されていることから、今後10年間で2000億香港ドルを投入し、病床数を5000、手術室を90に増やすほか、経済的に厳しい女性に対して高額な子宮頸がん予防ワクチンを無料で接種するサービスを始める。

 第13期5か年計画と一帯一路については、特に習近平国家主席が提唱した一帯一路構想は香港の開拓に新機運をもたらすとして、貿易やサービス、教育、文化・交流事業に積極的な融資を行い、インドネシアと韓国には香港政府の経済貿易事務所を開設。一帯一路に関連する国の学生が香港で学ぶための奨学金を増やすとしている。

 梁長官は昨年、行政長官選挙の選出方法が立法会で否決された時点で、今後は経済などに重点を置くとしており、施政方針ではそれを表す結果となった。2016年の立法会選挙、2017年の行政長官選挙は「法律に基づいて、公平、公開、誠実な状況下において実行する」と話すにとどまった。

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