マレーシアカジノ大手ゲンティン傘下のクルーズ船運営会社「ゲンティン香港」が手掛ける「ドリーム・クルーズ(星夢郵輪)」が展開するクルーズ船「ゲンティン・ドリーム(雲頂夢号)」が9月1日、日本をテーマにした13本のツアーをスタートした。
ゲンティンドリームは全長335メートル、幅40メートル、18のデッキ、総トン数15万695トンのクルーズ船で、アジアのためにデザインされた大型クルーズ船で、香港では7月31日に運航を再開し、ワクチン接種や事前のPCR検査などを条件に、2泊と3泊を組み合わせ1回約1000人の乗客を乗せ、香港周辺海域をクルーズするプランを展開している。再開以降これまで約2万人が乗船した。
テーマを「日本」としたことから、船内各所に日本の要素を盛り込んでいる。乗船時には浴衣を着たスタッフが出迎え、エレベーターの扉にも「海上日本祭」の大きなサインを貼る。船内モニターには日本各地の動画を流し、「日本小食街」では日本のギョーザ、たこ焼き、お好み焼き、北海道チーズケーキなどを用意。船内各レストランで沖縄ポークを使ったメニューを用意するほか、沖縄のシークヮーサーやパイナップルなどのジュース類も販売する。
プログラムには、インストラクターによるラジオ体操も組み込み、船内に日本人になじみのある音を流すほか、さまざまな場所に日本をちりばめた。
9月は全部で13本のクルーズを予定しているが、日本政府観光局(JNTO)の協力も得て、香港内に事務所や拠点を持つ自治体のプログラムも展開する。3日出発に組まれた第1弾では、高知県と青森県のプログラムが行われた。高知県は6蔵の土佐酒を味わう「高知土佐酒品酒工作坊」を用意。バラエティー豊かな6蔵の土佐酒を通じて、高知を知ってもらう機会とした。コロナ終息後は酒蔵ツアーを計画したいという旅行会社などもあることから、将来を見据えたマーケティングにも生かす。
青森県は黒石市にある「手作り雑貨体験工房IRODORI(いろどり)」の体験プログラムを進化させたミニ灯籠作りを実施した。ねぶたに使う端切れの形を整え、のり付けしてオリジナルねぶた灯籠を作るワークショップで、将来インバウンド客に向けて展開予定の内容を初めて香港で試す機会とした。併せて、八戸酒造の「陸奥八仙」各種を飲み比べるイベントも。事前に酒蔵ツアーの様子を動画で収録し、実際に酒蔵ツアーに参加しているような雰囲気を演出しながら、参加者は日本酒を楽しんだ。県産米の華吹雪米を使い、磨き55%の純米吟醸生原酒「陸奥八仙 黒ラベル」や甘さの少ない「八梅」、ワイン酵母仕込みのアイテムなど7種類を提供。中でも美濃焼の壺にひしゃくを付けた「壺八仙」は見ためのインパクトからも人気が高かったという。
いずれのプログラムも想定した40席が満席となり、参加者は真剣に観光地の説明にも耳を傾け、プログラムを楽しんだ。参加者の一人は「隔離があっても7日程度なら日本に行きたい」と話し、「今年の夏休みは日本に行けなかったので、こうした体験ができてうれしい」という声も聞かれた。
今回の高知県、青森県を皮切りに、19日出発便は宮崎、22日は長崎、24日は福岡、26日は佐賀、29日の最終船は「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の世界自然遺産登録が正式に決定されたことを受け、沖縄と鹿児島が泡盛や焼酎を楽しむプログラムを共同で実施する予定。
出発は、2泊コースは水曜・金曜の夜、3泊コースは日曜夜に出発するスケジュールで、現在のところ12月まで販売。バルコニーがある部屋のみを販売する。料金は予約時のキャビンの空き状況によって異なるが、1人当たり1,188香港ドルに港湾施設利用税500香港ドルを加えた1,688香港ドルから予約でき、3人目、4人目はクルーズ料金の50%引で利用できるなど、以前のクルーズと比較するとリーズナブルな価格設定となっている。
現在、12歳以上の場合、出航日の14日前までにワクチンの接種を2回完了し、クルーズターミナルでのチェックイン時に正式な接種証明書を提出する必要がある。ただし、10月14日までの航海では、12歳~15歳の子どもは1回目のワクチン接種を受けていれば乗船できるが、10月15日以降は、2回の接種が完了していないと乗船できない。全ての乗客は、出発日の13時から48時間以内に採取した検体で陰性の結果証明を有料で手配する必要がある。