新型コロナ肺炎の防疫措置が続く香港で、2022年上半期で香港経済新聞の上半期PV(ページビュー)ランキング1位に輝いたのは、ANA便が6人の陽性者で香港到着便が運航停止になったニュースだった。
香港での新型コロナ肺炎は、海外と比べると、アルファ株、デルタ株の感染拡大を抑え込んできたが、感染力が高いオミクロン株については抑え込みが思うように進まなかった。結果として、公式発表で現在124万5797人が感染、死亡者も9400人を越えている。
帰国者の隔離、地場感染が出た場合の近隣住民や出勤者への強制隔離を含めた厳しい規制など、多くの規制に縛られ、ワクチン接種ついては1回目の接種をした人が92.6%、2回完了した人が88.7%、3回目が64.2%と、ワクチン接種を前提とした社会になった。
こうした中、香港着陸の各航空会社に課される特定の国や地域からのフライトを禁止する措置のほか、特定の同じ出発地から香港に到着する便を一定期間禁止する「熔断機制」については、4月1日、5月1日に段階的に緩和されてきたものの、1位にランクインしたANAだけでなく、JAL、キャセイほか多くの航空会社が適用を受け、影響を受けてきた。
2位には、香港内でオミクロン株の市中感染が初めて見つかったというニュースがランクインした。
3位と5位には日本食材を使った新店のニュースがランクイン。今や香港の至るところに店を構え、100店舗達成を機に、改めて世界的なブランドを作り上げたおむすびの「百農社」のグローバル旗艦店がオープンしたニュースや、かねてより日本食材を扱う高級価格帯スーパーとして知られてきたCity’superが駅ナカに初挑戦した店舗などに人気が集まった。
4位と7位にはオミクロン株の影響を受けて倒産した数々の店舗や、香港の景観を象徴するスターフェリーが経営危機に陥っていることを報じたニュースがランクイン。多くのサービス業が影響を受けている。
9位の「香港政府、オミクロン株で再び厳しい防疫措置 18時以降の店内飲食禁止」も衝撃的なニュースで、この日以降、4月20日までディナー時にレストランでの店内で飲食ができなかったことで、一般的に外食が多い香港人の食のスタイルも大きく変化した。
そうした中、8位には、1月1日掲載の新年を迎えるカウントダウンコンサートの記事がランクインし、渡航が制限される中で香港で年越しをした日本人の割合も多かった中、新しい年への期待を込めてアクセスも増えたと想定される。ランキングは、今年1月1日から6月30日までに配信したヘッドラインニュースのPVを集計したもの。上位10位のランキングは以下の通り(カッコ内は掲載日)。
1. ANA、6人の陽性者で香港到着便が運航停止に 濃厚接触者の隔離は14日に短縮(1/10)
2. 香港で初のオミクロン株の市中感染を確認 77カ所を対象に強制PCR検査も(1/3)
3. 香港におむすび店「華御結」のグローバル旗艦店「OMUSUBI」(1/11)
4. オミクロンに翻弄される香港 スターフェリーは経営危機、強制検査は優先事項ではない(3/19)
5. 香港のスーパー「シティースーパー」が新ブランド 駅ナカに初挑戦(1/10)
6. 香港市民全員への3回の強制検査 2回接種の自宅隔離者、陰性なら7日で終了(2/28)
7. 香港のオミクロン株、サービス業直撃 鳳城酒家が閉店、陸羽は休業へ(2/17)
8. 香港は初の「カウントダウンコンサート」で新年迎える 「M+」の壁面に日本語も(1/1)
9. 香港政府、オミクロン株で再び厳しい防疫措置 18時以降の店内飲食禁止(1/6)
10. 香港、第5波で30万人以上が感染 買い占め発生で食料不足も(3/4)
昨年の上半期は新型コロナ肺炎に関連するニュースが多かったものの、ほぼ同じ程度で日本関連企業、日本食材のレストランや店のオープン、奮闘ぶりのニュースもランクインした一方で、今年はほぼオミクロン一色に染まった。昨年までは世界的な感染者は多い中でも香港内は感染から守られてきた状況から一変したことによるものと考えられる。それだけ日々の香港の生活の中で、オミクロンの影響は大きく、感染者爆発、防疫措置、ワクチンを前提とした社会のスタートなど、変化があった半年でもあったと思われる。
いまだ隔離措置を講じる地域であるものの、以前の3週間強制隔離の時代と比較するとまだ移動を検討できるようになり、実際訪日ツアーなどもスタートした。香港はもともと国際都市とつながり、多くの観光客、出張者が行き交う街。現在、仮に隔離が3日程度になればより多くの渡航者が香港を訪れ、香港人も日本をはじめとした海外を訪れることができるようになる。
7月1日、香港は返還から25年を迎えた。香港への「国家安全法」に伴う情勢の中、焦燥感や脱力感も漂う中でも「この中で生きていかなければいけない」という状況から若者たちの新しいビジネスが生まれたり、これまでになかった香港発の人気アイドルグループに注目が集まったり、域内では活気の芽がない訳ではない。今年だけでも数百軒の日本食材を扱う店が開業したといわれ、依然として高級店は予約が取れないことも多く、新規店のオープンも多い。香港人が持つ力の一つでもある「消費力」は衰えておらず、訪日ができない中、高級すし店のオープンラッシュが続いたことからも分かるように、この力は、今は現地で発揮されている。この力を日本は、日本各地での消費につなげるためにも、香港市場への発信を緩めてはならない。下半期も、香港コロナ関連の情報をしっかりと伝え、ここ香港で生活する人にも、香港への再訪を考える人にとっても役立つ日々のニュースをいち早く伝えていきたい。