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香港・北角の広東オペラの殿堂「新光戲院」売却 今後の存続は不透明に

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 北角(North Point)のシンボルともいえる広東オペラの殿堂「新光戲院(Sunbeam Theatre)」が入居するビルが10億香港ドルで売却され、新しいオーナーの手に渡ったことが11月22日、明らかになった。

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 現在、新光戲院の契約満了は2025年となっているが、契約には特別条項で、新しい所有者は短期間のうちに賃貸者に対して引き渡し通知を出すことが可能となっている。現時点で、新オーナーの意向は明らかになっていないが、新光戲院の存続が不透明な状況となった。

 新光戲院が入っている「僑輝大廈」は23フロアあり、敷地面積は2万9800平方フィート、建築面積は9万6000平方フィート。そのうち新光戲院は地下1階~6階と屋上部分から成る。オーナーは不動産会社を経営するTOYO MALL(親会社は裕泰興地産)で、同モールの創業者である羅守輝さんと関係者が2003年に1億6,800万香港ドルで購入。現在、僑輝大廈の77.41%の権利を所有している。

 7月に入札があり、10億香港ドルで売却されたという。新オーナーが誰なのかは明らかになっていないが、2024年2月に新しい所有者に権利が正式に移る予定。TOYO MALLは約20年保有した結果、8億3,200万香港ドルの売却益を得たことになる。

 新光戲院は1965年に商務印書館の印刷工場があった場所に建設が開始され、1972年に開業した。以来、北角地区のシンボル的な存在となっている。1院と呼ばれる大ホールの座席数は1033で、コンサートなども開催しているが、ほぼ広東オペラ専用劇場となっている。2院は108席で、映画などの上映に使われる。

 同戲院の歴史は激動に包まれてきた。最初は華昌企業が銀都娯樂(Silver Entertainment)に経営を委託していたが、1980年9月1日から香港経済の歴史に欠かすことのできない実業家、霍英東(Henry Fok)さんが会長を務める「新光娯樂(Sunbeam Entertainment)」に経営が移った。1988年8月になると、袁耀鴻さんがトップの「香港聯藝機構(Hong Kong United Arts Entertainment)」が経営を引き継ぎ、2012年初まで運営された。

 目まぐるしく経営者が変わってきたが、大きな節目となったのがTOYO MALLが家主となった2003年。当初、羅さんはビルをショッピングモールなどに改装する意向を示したため、広東オペラの関係者は大きな先行きを不安視していた。しかし、「阿姐」こと、俳優の汪明●(Liza Wang)さんがオーナーと交渉し、さらに民政事務局(Home Affairs Bureau)も仲介に入ったことで、羅さんは2009年まで新光戲院を存続させることを決めた。 

 2012年になると、香港聯藝機構はビジネス的な理由から2012年2月19日で閉鎖すると発表したため、再び香港社会の大きな話題となった。すると、再び救世主が現れる。盛世天戲劇團の創設者である李居明さんが名乗りを上げ、羅さんと交渉。4年間の契約を更新し、2012年5月21日に再オープンした。李さんは数千万香港ドルと言われる多額の設備投資を行い、最新の音響や照明などを持つ劇場に変化させた。

 新しいオーナーの意向は明らかになっていないが、築50年以上が経過していることから、ビル全体を建て直す可能性は低くない。現在の賃料は月額130万香港ドルで、2025年までの契約があるが、契約条項に、新しい所有者は短期間のうちに賃貸者に対して引き渡し通知を出すことが可能となっているため、契約満了前に同盛世天戲劇團側に同戲院を引き渡すことを求める可能性も残る。仮に、再建したビルに同じ新光戲院が再び開業するとしても、しばらくの間、劇場は姿を消すほか、入居しない場合は、広東オペラの殿堂は消滅し西九文化区(WKCD)にある「戯曲中心(Ziqu Centre)に広東オペラの中心が移ることが想定され、今後の動向が注目される。

 ●=草かんむりに全

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