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香港「M+」の中華料理に新コース 書画家・張大千から着想得てメニュー化

「M+」内のレストラン「華CVIEW」で提供されている特別コース「大千宴」の料理(キヌガサダケとカニ肉を使ったふかひれスープ)

「M+」内のレストラン「華CVIEW」で提供されている特別コース「大千宴」の料理(キヌガサダケとカニ肉を使ったふかひれスープ)

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 香港の現代視覚文化美術館「M+」内にあるレストラン「華CVIEW」(16/F, M+, 38 Museum Drive, West Kowloon Cultural District, Kowloon TEL 2880 5535)が現在、20世紀を代表する中国近代の書画家、張大千(チャン・ダーチェン)から着想を得た特別メニュー「大千宴」を提供している。

コースの着想の元となった、書画家・張大千の手書きのメニュー

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 同店は、グルメと270度のシービュー絶景にアートを融合させた中華料理店。一方はビクトリアハーバー、もう一方はランタオ島と青馬大橋の景色を一望できる。デザインは、香港の陳幼堅(アラン・チャン)さん、建築家の許諾(エノク・ホイ)さん、照明デザイナーの關永權(ティノ・クワン)さんらが手がけたもので、背景のビクトリアハーバーを引き立てながらも、中国の唐と宋の美学と江南式庭園からヒントを得て、伝統的な中国のびょうぶとすっきりとしたラインを組み合わせている。

 同店創業者は、1960年代の自宅で開かれた歓談の席で、張大千手書きのメニューを手に入れた。このメニューは、張大千の5代目の子孫に当たる張心沛さんが半世紀以上も大切にしていたもので、張さんは快く複雑な料理技術を教えてくれたという。そして、数カ月にわたり厨房(ちゅうぼう)チームが 60年前の美食のレパートリーを再構築し、復活させた。

 四川省内江出身の張大千(1899-1983)は20世紀の中国を代表する芸術家。その卓越した技巧に、「東洋の張、西洋のピカソ」と呼ぶ人もいる。張は中国古典絵画の巨匠だが、後に移り住んだ米国で現代美術を再構築した。水墨風景画から抽象画まで作品は多岐にわたる。没後40年近くたち、張が1947年に制作した「王希孟の模写『千里江山図』」は、香港で行われたサザビーズのオークションで、3億7,000万香港ドル(約74億円)で落札されている。

 自身も料理をしたという張大千は、食材には厳しい基準を設け、新鮮さに欠ける食材は排除していたとされているが、60年以上の時を経て、林衛昌(Jack Lam Wai Cheung)シェフがメニューを完成させた。林シェフは、香港とマカオの「美食コングロマリット」でミシュランの星を獲得した経験を持ち、「芸術と同じように、料理という領域もまた、絶え間なく変容を要求されること」も意識して、張大千の美食のレパートリーを深く掘り下げたという。

 コースは1,880香港ドルで、「六一絲」と呼ぶ前菜は、サナギダケのこしょう風味揚げ「椒鹽鮮蟲草花」、アワビメニュー「紅油鮑魚凍」など6種類、これに続いて、鶏は フォアグラ入りスモークチキン「燻子供鶏」、キヌガサダケとカニ肉を使ったふかひれスープ「魚翅(ぎょし)」は、フカヒレ、細切りの蟹肉やタケノコ、キュウリを合わせたもの。澄んだ鶏ガラスープで煮込んだスープには 鶏本来の甘みがあり、魚介類特有のフレッシュさを残したスープ に仕上げた。その後、紹興酒を使った蒸し魚「清蒸魚」を提供する。

 大きなナマコ「大烏參」には、豚肉とエビのすり身を混ぜたものを詰めた。このナマコをスープで煮込み、高温の油で揚げる。広東料理の典型的な濃厚な煮込みとは異なり、「繊細な食感とほのかな歯応えがあり、あっさりとした味わい」だという。スパイシーなアクセントを加えることで、四川省内江市出身の張大千の故郷の味をほうふつとさせるものとした。

 ほかにも、ジャンボエビのスイートチリソース煮込み 「干燒蝦」や、タケノコの牛肉巻を入れたトリュフスープ「松露菌湯和牛肉筍」、タロイモを使った「●磨芋」、デザートにはツバメの巣の冷たい「凍燕窩露配艾餅」をコースメニューに仕上げた。同コースは2日前までに予約する必要がある。

 営業時間は、ランチ=11時30分~15時、ディナー=18時~22時。

 ●=火へんに會。

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