
立法会の梁君彦(Andrew Leung)議長を中心とした立法会議員8人が昨年12月21日から24日にかけて日本を視察し、そのリポートが3月31日に公表された。議員団は、国会、豊洲市場、横浜中華街などを視察し、そこから得たものを生かし、日本と香港との関係強化についての提案などを行っている。
議員団の海外視察は、2024年にASEANのマレーシア、インドネシア、シンガポールの3カ国視察に続く2度目となる。日本を選んだ理由として、2024年の香港の日本に対する貿易額は3,076億香港ドルと7番目の貿易相手国であることで挙げる。日本からの香港への農林水産物の輸出について2024年は2,210億円(報告書的には114億香港ドル)で世界第2位の輸出先であり、日本から香港への投資は、2023年は2,424億ドルと世界第9位。加えて、2024年の日系企業の数は1430社で外資系企業としての国・地域別ランキングでは最も多い。こうした背景から立法会としては日本との関係を強化したいという観点から視察を行った。
日本と香港の最大の懸案事項になっている10都県の水産物の輸入禁止については、江藤拓農林水産大臣と対面の機会を持った。日本側は「科学的議論に基づいて議論したい」とし、香港側は「安全性が判断できる十分なデータの提供」を要請した。ただ、議員団としては日本の食品輸入問題について、「香港政府と共に積極的にフォローアップしていく」とした。
これに関係して豊洲市場も視察。市場関係者から、市場の運営のほか、衛生面、物流、鮮度の保ち方など完全密閉型の仕組みを説明してもらうことで知見を深めた。現在、香港国際空港の横で大規模な開発が行われているが、その中に、空輸された農水産物を販売する市場「空運鮮活市集」を建設している。豊洲は、市場であり、観光地にもなっていることから、「豊洲市場が持っている多彩なノウハウは新市場建設の役に立つ」としている。
香港で日清食品の存在感は大きいが、議員団は横浜にあるカップヌードルミュージアムも訪れた。これに合わせて日清食品香港の安藤清隆董事長も帰国し、日清食品の企業としての在り方などを説明した。議員団は、「外資系企業が香港に地域ヘッドクオーターを置いてビジネスをしてもらうことが香港経済を活性化させること」を再認識。「多国籍企業が投資しやすいような税的優遇などを政府に建議していく」とした。
2024年に日本を訪れた香港人は268万人だが、日本から香港を訪れる日本人観光客は2018年は129万人だったものの2024年は56万人にとどまり、ある種「一方通行」のような形になっている。その原因は、2019年の大規模デモが発端になっていることや、日本人の中で、香港を象徴した路上にはみ出ていたネオンサインが減るなど、香港らしさが失われていることを残念がっている人が少なくないことを議員団は理解している。
その中で、横浜の中華街のまちづくりも観光振興の参考になったという。中華街は、広告や土地の用途、騒音の管理など細かな規定があるが、その中で中華街らしさを打ち出して日本有数の観光地になっている。この考えを応用して、「香港らしさ」を維持するため、「彌敦道(Nathan Road)や廟街(Temple Street)など限定した場所で、安全性を担保した上でネオンサインを復活させることを政府などに提案したい」とした。
このほかにも、横浜の赤レンガ倉庫の使い方に関心を示した。歴史的建造物の内部を改修し、飲食、買い物、歴史、文化活動が一体的に行われている。香港では歴史的建造物内では、複雑な各種ライセンスの関係からレストランなどを展開しているケースは多くない。そこで、「事務手続きを円滑にするため、ワンストップで各種サービスを提供できる専門事務所の設置を提案したい」とした。日本への訪問では、「香港特別行政区政府と日本の関係当局の全面的な支援と援助により、実り多い任務を成功裏に終えることができた」と結んだ。