
世界的なバーランキング「The World’s 50 Best Bars 2025」の授賞式が10月8日、啓徳のクルーズターミナル特設会場で行われ、香港・SOHO地区にある「Bar Leone」が1位に選ばれた。香港のバー業界にとって歴史的な一日となった。会場には、1000人以上のバーテンダー、投資家、メディア関係者が集まった。
The World's 50 Best Barsは、イギリスのWilliam Reed Business Mediaが毎年発表する世界のバーのランキングである。2009年の創設以来、毎年世界中の優れたバーを表彰し、バー文化の進化と多様性を映し出す指標として注目されている。ロンドンで始まり、バルセロナを経て、今やアジアがその舞台となりつつある。
創設当初は、ロンドンを中心に欧米のバーがランキング上位を独占。2009年から2021年までの授賞式はロンドンで開催し、ニューヨークの「Dante」やロンドンの「Connaught Bar」などが常連として名を連ねていた。バー文化の中心は、まさに西洋にあった。
しかし、2022年以降、その地理的重心は徐々に移り始める。2022年と2023年にはスペイン・バルセロナで授賞式が行われ、地元の「Paradiso」などが注目を集めた。ヨーロッパの他都市、アテネやパリなども台頭し、ランキングの顔ぶれにも変化が見られるようになる。
昨年、授賞式は初めてアジアに上陸し、シンガポールで開催。「Atlas」や「Manhattan」などのシンガポールのバー、香港の「The Old Man」などがランクイン。今回、アジアで2度目となる授賞式を香港で開催した。「Bar Leone」に続き、メスカルを中心としたカクテルで知られる香港の「COA」やソウルの「Zest」、シンガポールの「Cat Bite Club」なども高く評価され、ランキングは地域的に多様化している。
この変化の背景には、ミクソロジーの進化により、地元食材や文化を取り入れた独創的なカクテルが世界的に評価されるようになったことも挙げられる。さらに、各都市がバー文化を観光資源として活用するようになったこともある。審査員の構成も国際化が進み、現在では500人以上の専門家による投票によって、地域バランスが、より公平に反映されるようになった。
Bar Leoneは、2023年に開業し、翌2024年には「The World’s 50 Best Bars」で世界2位、アジア1位にランクイン。そして今年香港で初開催された授賞式にて、アジアのバーとして初めて世界1位の栄冠を手にした。
香港はかつて、英国統治時代のパブ文化やホテルバーを中心に発展してきたが、2000年代以降、独立系バーやクラフトカクテルの台頭により、個性豊かなバーが次々と誕生。特にセントラルやソーホー、灣仔エリアでは、世界水準のミクソロジーを提供するバーが集まり、アジアのバーシーンをけん引する存在となっている。高級ホテルのラウンジバーから始まったバーが、独立系バーやクラフトカクテルの台頭を経て、バー都市に成長を遂げた。
Bar Leoneもソーホー地区にある小さなカクテルバー。華やかなバーが並ぶ国際都市香港の中でも、同店は「街角のバール」のような親しみやすいスタイルで、世界中のバーテンダーや愛好家から熱い支持を集めてきた。コンセプトは「Cocktail Popolari(庶民のカクテル)」。高級志向ではなく、誰もが気軽に楽しめる一杯を目指し、シンプルながらも素材と技術にこだわったカクテルを提供している。例えば、ウオッカマティーニにはスモークオリーブのブラインを使い、独特な味わいを演出。ユズ酒を使ったホワイトネグローニなど、クラシックカクテルを再解釈したメニューが並ぶ。
Bar Leone創業者のロレンツォ(Lorenzo Antinori)さんは「世界一に選ばれたことは、私たちにとって大きな栄誉であると同時に、香港という街が世界のバー業界の中心にあることを証明する瞬間」と喜びを言葉にし、香港のバー文化の可能性を世界に示した。