上海ガニのシーズンが本番を迎え、香港内の上海料理を提供するレストランでは地元民や観光客向けの上海ガニを使ったコースメニューの提供が佳境を迎えている。尖沙咀で甘辛、濃厚なメニューが多い上海料理と、あっさりで繊細な味付けも多い淮揚料理を提供する尖沙咀のファインダイニング「个園竹語」(Shop 3202, 3/F, Gateway Arcade, Harbour City, 25 Canton Road, Tsim Sha Tsui、TEL 2116 8328)では現在、上海ガニを使ったコースメニューを提供している。
今年の上海ガニは鮮度・価格共に評判が良いという。江蘇省から約300キロの上海ガニが直接輸送されるルートを通り、鮮度も格段に向上した。輸送コストを下げたことで、価格も昨年比で約10%安くなっている。毎年問題が出ることも多い食物安全中心(CFS)が実施した品質検査で、101個のサンプル全てが基準を満たし、安全性も確認された。例年より1週間程度遅い10月に入ってから香港内の各レストランに出回り始めている。
同店では上海ガニを主役にした季節限定コース「六両大閘蟹.珍●八味金秋宴」(598香港ドル)を提供しているが、江蘇省産の六両の大閘蟹を中心に、淮揚・滬菜の技法を融合した8品の料理で構成するコースは、「食材の鮮度と職人技を楽しんでほしい」という。7両(約260グラム)の上海ガニを含むコース(1488香港ドル)も用意するほか、アラカルトメニューも用意する。
料理長の王東師傅シェフは、江蘇省の淮安・揚州・鎮江を中心とする地域に発展した伝統的な料理体系である淮揚料理を文化遺産として伝える役目として30年以上の経験を持つ料理人。今回のメニューも江蘇産の大閘蟹を「足六両」という約225グラム、甲羅の幅はおおよそ6~7センチ程度のサイズのものを用意したが、カニみそも昨年よりも多く詰まっているという。
同店では、カニの大きさを保証し、鮮度と品質を徹底管理している。全て検査済みで、水産入り口証書も添付されたものを使う。さらに、客の目の前で蒸したての上海ガニを店員が手作業でほぐす「現場鮮拆蟹粉」サービスも導入。上海ガニは「蟹腮(エラ)」「蟹腸(腸)」「蟹心(心臓)」「蟹胃(胃)」などは食べてはいけないとされているが、この臓器も店員が取って皿に並べる。
コースは4品の前菜で始まるが、発酵調味料や紹興酒に漬け込んだアワビ「糟香醉鮑魚」、クラゲの細切りを香り高い葱油(ネギ油)であえた冷菜「上海葱油海●絲」豚のスペアリブを甘酸っぱいタレで炒めた「糖醋小排骨」、半熟卵の燻製「煙燻溏心蛋」を食べながら、上海ガニを待つ。続いて、カニを使ったフカヒレ入りのスープ「个園現拆蟹粉●魚翅」を提供するが、これは毎日店内で、手作業で取り出したカニみそ・身・卵などを含む蟹粉を、老鶏と金華火腿で6時間煮込んだ濃厚スープに合わせ、フカヒレ(魚翅)と共に煮込むことで、蟹のうまみが全体に染み渡り、トロリとしたスープになる。
「蟹乾粉翡翠牡丹蝦球」は、ボタンエビを「美しく」揚げ、蟹粉で味を引き立てた一品。これが終わると蒸して真っ赤になった主役の上海ガニ「清蒸江蘇六両大閘蟹」が登場する。さらに、タロイモと白身魚を燻製したものにあんかけで仕上げた「私宴海派燻魚配芋餅」、魚の浮袋としっかりと味が染み渡った大根を組み合わせた煮物「揚州蘿蔔扣花膠」、蟹粉入りのショウロンポー「原隻蟹粉小籠包」と続き、上海ガニで冷えた体を温めるようにキンモクセイ入りのごま団子スープ「桂花●薑芝麻湯圓」で締める。
営業時間は、ランチ=11時30分~16時30分、ディナー=18時~22時30分。コースメニューの予約は2人から。
●=食へんに羞、●=折かんむりに虫、●=火へんに會、●=多へんに句。