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香港で「日港I&Tフォーラム」 深まる両地域の技術連携

右から黄克強CEO、張曼莉副局長、三浦潤総領事、原丈人会長、松尾豊教授

右から黄克強CEO、張曼莉副局長、三浦潤総領事、原丈人会長、松尾豊教授

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 香港科技園(HKSTP)は10月31日、日本・香港イノベーション・テクノロジーフォーラム」を開催した。在香港日本国総領事館、DEFTA Partners、国連経済社会理事会(ECOSOC)特別諮問資格を持つアライアンス・フォーラム財団との共催。当日は、官民学の代表者が一堂に会し、人工知能(AI)やバイオ技術、投資、スタートアップ支援などをテーマに議論を交わした。

ベンチャーキャピタリスト、実業家として世界で名をはせ「公益資本主義」提唱者としても有名な原丈人さん

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 同フォーラムには、在香港日本国総領事の三浦潤総領事(大使)、香港政府イノベーションテクノロジー産業局(創新科技及工業局)の張曼莉副局長、HKSTPの黄克強CEO、DEFTA Partners創業者でHKSTP顧問の原丈人さん、東京大学の松尾豊教授らが登壇。日港両地域の技術力と国際的なネットワークを生かした連携の可能性を探った。

 会場となった「香港サイエンスパーク」は、IT・電気通信、エレクトロニクス、精密工学、バイオテクノロジーの4分野での技術革新を促進し、「最適な研究開発環境の提供」を目的に香港政府によって建設された研究開発施設。同施設には300を超える企業が入居しており、ロート製薬などの日系企業も入居する。

 同施設を運営するHKSTP は2001年の設立以来、26の国・地域から集まった13のユニコーン企業、1万5000人以上の研究専門家、2,500社以上のテクノロジー企業を育成し、ヘルスケア技術、AI・ロボティクス、フィンテック、スマートシティ技術などの開発に注力してきた。

 イベント冒頭、三浦大使は「香港および深セン・広州との連携によるイノベーション拠点としての重要性が高まっている」と述べ、「日本と香港は、長年にわたる関係を基盤に、イノベーションとテクノロジー分野での協業機会を模索すべき時が来た」と強調した。香港のスタートアップに対し、「日本各地を訪れ、地方都市の可能性を理解してほしい」と呼びかける一方、日本の新興企業にも「香港進出による機会を積極的に捉えてほしい。そうすることで、両地域が技術分野で共に成長できることを願う」と期待を寄せた。

 張副局長は、香港政府によるスタートアップ支援策として、100億香港ドル規模の「研究・学術・産業連携One-plusスキーム」や1億8,000万香港ドルの「I&Tアクセラレーターパイロットスキーム」、新産業化加速スキームの申請要件緩和などを紹介。「日本のI&T企業が香港に拠点を構えることで、中国本土と海外市場へのアクセスが広がる」と述べた。

 HKSTPの黄CEOは「このフォーラムは日本のディープテックの強みと香港のグローバルなプラットフォームを融合させ、新たな協力の時代を切り開くもの。われわれはスタートアップのグローバル展開を支援するとともに、国際的なイノベーションリーダーの香港進出とスケールアップを促進していく」と話す。

 登壇したベンチャーキャピタリスト、実業家として世界で活躍するDefta Partnersグループの原丈人会長は、企業が株主の利益だけでなく、従業員やその家族、顧客、仕入れ先、地域社会、地球といった、関わるもの全てに利益分配を行う、つまり社会全体の利益=「公益」を追求することを目的とした「公益資本主義」の提唱者としても知られている。原会長は「香港が日本・中国・米国を結ぶ上で地理的に極めて重要な場所であることや、アジアトップ大学のうち5校が香港にあるなど学力水準の高い点から、香港と日本がうまく協業すれば、今後香港がアジアをリードする可能性がある」と示唆した。

 日本を代表するAI研究者の一人である東京大学の松尾豊教授はAI分野における日港連携の可能性について専門的見地から意見を述べた。AIロボット協会(AIRoA)と連携して展開する事例として、「東京から操作して韓国で作動させるコーヒーマシン」「ロボットがデータからパンを焼く」プロジェクトなどを紹介した。

 原会長や松尾教授を交えたパネルディスカッションも行い、人工知能、投資、ビジネス連携、バイオ関連技術などをテーマに活発な議論が行われ、日本と香港の起業家、科学者、業界リーダーが集い、知見を共有しながら相互成長の可能性を探った。両地域の技術的強みと市場アクセスを融合させることで、持続可能な成長とグローバル課題への対応を目指す姿勢が鮮明に示された。

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