香港の文化・観光の新たな拠点として注目を集める西九龍文化地区に11月15日、同地区と中環を結ぶ新航路が生まれ、フェリー「西九渡輪(WestK Ferry)」が正式に運航を始める。
2021年にオープンした現代美術館「M+」の向かいに完成した西九埠頭
香港島のビジネス、観光の中心地である中環から直接西九龍へ繋がる新しいルートの誕生となる。西九文化区管理局(WKCDA)は、M+美術館前の海沿いに新設されたフェリーターミナル「西九碼頭(WestK Quay)」の完成も発表し、待望の海上交通インフラが加わることになった。
西九碼頭は、公共施設としての機能に加え、観光・文化体験の起点として設計された。冷房完備の船内では、ペットや自転車の持ち込みも可能。船体デザインは香港知専設計学院の学生が手がけ、海浪(波のうねり)をモチーフにしたダイナミックな外観に仕上げた。
運航は富裕小輪社が担当し、片道約8分で西九龍と中環九號碼頭を結ぶ。平日は8時~22時、週末と祝日は23時まで、30分間隔で運航する。運賃は、大人片道=20香港ドル、ペットも同額。子ども、高齢者、障害者には10香港ドルの割引料金を適用する。月額560香港ドルの定期券も販売し、通勤・通学者や観光客にとって柔軟な移動手段としての利用も見込む。
中環から西九龍へのアクセスが海路で可能になることで、観光動線が大きく変化する。これまで地下鉄の駅から徒歩で10分以上、タクシーなどにも頼っていたアクセスがビクトリア・ハーバーの景観を楽しみながらの移動へと変わることで、「観光体験そのものが豊かになる」という。12月からは西九碼頭が民間船舶の予約利用にも対応となり、柔軟な水上アクセスが可能となる予定。
香港の観光業は2025年に入り回復基調を強めている。2025年の1~9月は累計3647万1648人で前年比11.9%を達成。特に8月は日本からの観光客数も回復し、単月で7万6299人となり、前年同月比54.6%の勢いも見せる。今回フェリーが運航する西九龍地区には、コロナ禍に開業した西九龍の視覚文化に特化したアジア初の美術館「M+」や「故宮博物館」、中国オペラ専用劇場「戲曲中心」など、同エリアにも新しい観光スポットが次々と登場している。広大なアートパークなども擁し、年間1000以上の文化イベントを開催。今秋にも音楽イベントやペット向けイベントなどが週末ごとに開催され、観光客も楽しめるイベントもめじろ押しだ。
フェリーターミナルには新飲食施設5店舗もオープンする。香港のストリートフード、屋台料理、創作ベジ料理など多彩なメニューがそろう。11月中は渡輪乗船時にQRコードをスキャンし、飲食店で提示することで割引特典が受けられるキャンペーンも行う。