香港鉄路(MTR Corporation)は12月20日、政府の招請を受けて南港島線(西段)の詳細な計画・設計作業の開始を発表した。行政会議の承認を経て進める同プロジェクトは、香港島南西部の鉄道網拡充に向けた重要な一歩とし、完成すれば南港島線(東段)と港島線を結び、地域住民にとって利便性の高い環境に優しい交通手段を提供することになる。
南港島線(西段)は「鉄路発展策略2014」で提案された7つの鉄道計画の一つで、当初の計画であれば2026年には運行が始まる計画だった。しかし、港島南区の起伏に富んだ地形は重鉄建設の大きな障害となった。
運輸及物流局の説明によれば、沿線は地勢の起伏が大きく、例えば瑪麗醫院と田湾海辺の高低差は130メートル以上、華富邨と香港仔海辺の高低差は60メートル以上に達する。従来の重型地下鉄方式では深い地下を掘削する必要があり、建設費用や工期の財務的な問題に加え、乗客の利便性も著しく低下するため、実現困難と判断された。
そこで、専用高架橋とトンネルを走行する羽田空港からの東京モノレールのような集体運輸システムを採用することで、建設コストを従来案より約4割削減し、完成時期も約2年早めることができる見込みとなる。
新しい計画では全長約7.5キロの専用高架橋とトンネルを整備し、黄竹坑駅で南港島線(東段)と接続、香港大学駅で港島線と接続する。中間駅は香港仔(Aberdeen)、田湾、華貴、華富、数碼港(Cyberport)、瑪麗醫院(Queen Mary Hospital)の6駅に加え、接続駅を含めて計8駅を設置し、数碼港駅付近には車両基地も建設する予定だ。
南港島線(西段)の整備は、香港島西区と南区に住む約13万人の住民に新たな交通手段を提供し、主要施設である瑪麗醫院や数碼港へのアクセスを改善する。古くから漁業の町として知られる香港仔や、住宅団地が広がる華富・華貴地区、IT産業の拠点である数碼港、そして香港大学付属の大型病院である瑪麗醫院など、多様な都市機能を結ぶ。
これにより、住民の日常的な移動や通勤・通学が改善されるだけでなく、公共施設へのアクセスも向上し、「地域社会の生活の質を高める効果が期待される」という。環境に配慮した鉄道サービスの提供は香港の持続可能な都市発展、都市の競争力強化にも直結する。
南港島線(西段)が完成すれば、南港島線(東段)と港島線と合わせて環状ネットワークを形成。現状では、例えば華富邨から黄竹坑を経由して金鐘までの移動に約35分、香港大学まで約25分を要するが、新路線の開通後はそれぞれ約20分、約10分に短縮される見込みで、住民の移動時間が大幅に改善される。今回のプロジェクトは、香港島南西部の住民にとって利便性を高めるだけでなく、都市全体の鉄道ネットワークの結びつきを強化するものと位置付ける。
加えて、華富邨再開発に伴う新人口流入のタイムラインに合わせたものであり、都市計画と鉄道整備を連動させる狙いもあるという。
MTRの最高経営責任者(CEO)、金澤培(Jacob Kam)博士は「地形の制約や費用対効果を考慮し、南港島線(西段)はスマートで環境に優しい大量輸送システムを採用し、既存のMTRネットワークに接続させる。政府からの招請を歓迎し、詳細設計を速やかに始める。政府や地域社会と緊密に連携し、建設と完成に向けて取り組んでいく」と述べた。
香港鉄路は、今後2年間で詳細設計を詰め、政府とも財務関連の協議も進め、前期工事は2027年に着工、2034年またはそれ以前の竣工を目指す。