10月10日に予定されていた政府と学生の対話が中止になったことを受けて、長期化が続く香港のデモは11日・12日の週末も金鐘を中心に封鎖が続き、13日には金鐘地区でも暴徒が発生するなど刻一刻と状況が変化しているが、その影で香港人の臨機応変な対応力が垣間見える。
平日の日中は多くの一般市民は仕事に戻っていたが就業時間を過ぎた10日深夜には金鐘から中環に続く道路一面に人があふれ、深夜11時過ぎには数万人規模に膨れ上がった。その後迎えた週末もテントの数が増え、夜を徹して道路に居座る人も多く見られ、時折集会も開かれて多くの香港市民が集まっていた。
香港島のメーン通りを東西に走る2階建て路面電車のトラムも中心部が封鎖されたことにより、折り返し運転をしていたが、11日、中環はペダービルディング(畢打行)まで終点が延長された。終点のその先、スタンダードチャータード銀行本店の前にかけて、路面には工事をしたばかりの色が異なるコンクリートの跡が目立つ。
トラムは中環の同ビル前に到着すると、5人ほどのスタッフが走り寄り路面のレールを手動で移動させる。そして、電気で走るトラムには架線をつるすワイヤーが付けられているが、スタッフが先がハンガーのフックのようになった棒で、反対車線の電気レールにワイヤーを架け替え、数人がかりでベビーカーを押すようにゆっくりとトラムを動かして反対側の軌道に乗せる。こうして、中環から堅尼地域行きの臨時トラムとして運行している。
金鐘のデモエリア中心には「青空自習室」が登場した。道路の真ん中に長い机や地べたに座り大きな机を囲む寺子屋式の机が置かれ、「学生優先」という文字や「家庭教師します」というメッセージが貼られている。頭上にはケーブルを通し、等間隔に電球をつけるなどして、夜暗い中でも自習ができるように工夫されている。デモ開始から2週間、シャワー室が登場したり、折り紙講座が開かれるなど、デモの平和な状態が続くことも多い。
しかし依然として足踏み状態が続くデモについて、街頭エリアでは火鍋で知られる灣仔駅前の「譚魚頭火鍋」が6日突然閉店し、給料なども支払われないまま雇用主と連絡が取れなくなるなどの事態も起き、経済的な打撃が少しずつ明るみに出始めている。13日になり、一部バリケードの回収なども進んでいる。