無料地上波放送の「亜洲電視(ATV)」はまもなく、3月4日に放送を終了する。原因は資金繰りの悪化だ。一方で、通信大手のPCCW傘下の有料テレビNOW TVの地上波テレビ放送である「Viu TV」が4月6日から放送を開始することが3月2日公表された。
ATVは有料テレビの麗的映聲として1957年に開局した香港最初のテレビ局。その後、無料化したが、1967年に開局した無線電視(TVB)に視聴率では大きな差をつけられ、広告収入でも圧倒的な違いにつながり、それが番組制作能力でも差が出ていた。近年は、オーナーが変わることが頻発するなどガバナンスも安定せず、それが経営状況の悪化を招いていた。その結果、香港政府は昨年、放送免許の更新をしないことを決定し、2016年4月1日をもって放送終了することが決まっていた。
同局の資金繰りは依然として厳しい状態が続いているといい、関係者は3月3日17時に経営継続するかどうかの判断をすると決定。監査法人のデロイトは新しい投資家に対し継続して放送するために800万ドルが必要と訴えたが投資家サイドは拒否。その後、投資家側が別な提案をしたが、今度はデロイト側が納得せず、協議は物別れに終わった。日に日に債務が増え続けていることからデロイトは、経営継続はきわめて困難であると判断して、保安や会計といった最低限の部署を除き解雇を決定。3月4日の放送をもって停波となる。
過去ATVに所属していたある女優は「Pity and Sad」と話した後、それ以上は言葉が続かず、ライセンス有効期限前の停波にショックを受けていた。
日本ではNHK BS1で早朝4時から世界各国のテレビ局のニュース番組のトップニュースと2本目を基本的に流す番組を長年放送しており、香港からはATVの19時台のWorldチャンネルのニュースが流れていた。しかし、資金難にあえぐATVは2月6日にWorldチャンネルでの放送が休止され、日本でも放送されなくなっていた。
昨年のATVの放送免許を更新しないことを決定した香港政府は、それと同時に香港通信大手のPCCWが運営する「香港電視娯楽(HKTVE)」に向こう12年間の地上波無料放送の権利を与えた。HKTVEは4月6日からチャンネル番号99番で「Viu (ビゥ)TV」という名前で放送を正式に開局すると3月2日に発表した。ケーブルテレビなどの有料放送を通じて視聴する場合は3月31日から、地上波デジタル放送では4月2日午前3時から試験放送の視聴が可能だ。スマートフォンやタブレットでは再放送/見逃し放送に力をいれて視聴できるようにする。
同局の魯庭暉・総経理は「話題性に富んだバラエティーあふれる番組がそろっている」とし新しいテレビ局ということで「実験的なテレビ局にもなる」と今までにないコンセプトの番組に取り組みたいとした。
香港の場合、放送法の規定により広東語と英語の2チャンネルを放送しなければならない。Viu TVはライセンスを交付される際、12年という長期にわたるライセンスを受けたが、その引き換えに、香港政府からは2年以内に広東語と英語チャンネルを1局ずつ開局し、広東語放送は24時間、もう一つも最低16時間の英語番組の放送を行うことを政府と約束した。今後10年で27億香港ドルの投資を行う予定で、年間で4000時間の新番組を放送するとしている。
番組は月曜から金曜日の深夜0時45分から夕方17時までは、同じテーマで放送されるのが基本。例えば、24時45分、10時、13時30分からは1時間はアジアドラマがテーマで、日本、韓国、台湾、タイなどのドラマが放送される。土、日は多種多様な番組がそろう。
目玉番組は、6組12人が担当する旅番組。その一つが「長毛」こと梁国雄・立法会議員と曽鈺成・立法会議長という"天敵同士"が一緒に出演する。普通ではありえない組み合わせだけに早くも香港市民の間では話題になっている。香港らしく投資の番組も少なくないほか、日本のアニメや自主製作の子ども向け番組も放送される。スポーツではサッカーのスペインのサッカーリーグ、リーガ・エスパニョーラや香港セブンズ、女子のMMA(総合格闘技の1つ)の放送も行われる。任賢齊(リッチー・レン)、梁漢文(エドモンド・リョン)、劉心悠(アニー・リウ)など有名芸能人を起用した生活関連番組などを製作する計画という。
香港政府は有線電視(i Cable Communications)傘下の「奇妙電視」にも無料放送のライセンスを与えている。「奇妙」の放送開始時期はまだ確定していないが、最終的には3局6チャンネル体制となる見込み。
注)その後の状勢の変化により、3月4日22時過ぎに、4月1日まで放送が続くことが発表された。