香港のフェリー会社「天星小輪 スターフェリー)」が11月15日、1400万香港ドルをかけて改修をした「世星号(World Star)」を発表した。同号で、尖沙咀(Tsim Sha Tsui)のフェリーターミナルからディズニーランドまでの新路線を就航させる予定だ。就航は11月末から12月半ばまでの間で調整している。
スターフェリーの前身は1880年にゾロアスター教寺院の料理人であったインド系のドラブジ・ナオロジー・ミティラーさんが起業した「九龍渡海小輪(Kowloon Ferry)」で、「曉星(Morning Star)」と名付けられた1階建ての船を尖沙咀と中環(Central)の畢打街(Pedder Street)を結ぶ路線で運航していた。就航当時は片道40分から1時間の所要時間がかかり、燃料の石炭供給の関係から月曜日と金曜日は運休していたという。10年後の1890年には4艘(そう)を持つまでに成長し、数年後から2階建てのフェリーが導入された経緯がある。
1898年5月、当時の香港最大の複合企業の一つ「九龍倉」が九龍渡海小輪を買収し、現在の名称に改名したため、船名には「星(Star)」がつく。当時の初乗り運賃は5分(0.05 香港ドル)だった。現在の所要時間は約10分だが、かつてエンジン性能の問題から片道を移動するだけでも時間がかかったこともあり、乗車中に麺類などを食べることもできたという。路線も企業規模拡大とともに増え、尖沙咀-湾仔、中環-紅ハム(=石へんに勘)が就航したほか、1999年には油マー(=草かんむりに麻)地小輪が運営していた湾仔-紅ハムを引き継いだ。地下鉄との競争は厳しく、最終的に紅ハムを結ぶ2つの路線は運航を停止している。
一方、2003年からはビクトリアハーバーを横断しハーバー内を1周する「天星維港遊(Harbour Tour)」を就航し、観光客の間では人気となっている。特にシンフォニー・オブ・ライツや旧正月などの花火鑑賞ができる便の予約が多いという。
2015年末現在の保有船は8艘で、船の平均使用年数は53年、1日平均5万5285人、年間2020万人が乗船する。
今回、香港ディズニーリゾートとの間で使用される船は、2011年に廃止になった湾仔-紅ハム間で使われていた「世星号(World Star)」で、約1400万香港ドルを投じ、1年間かけて大改修を行い(うち410万香港ドルは香港政府の補助金など)、定員180人の船に生まれ変わった。エンジンはディーゼルと電気のハイブリッドという「エコフェリー」なパワーユニット。これにより燃費が良くなったほか、二酸化硫黄など有害物質の排出量が大幅に減った。内装も木のベンチからソファにするなど快適性を重視したものに変更したほか、天井の一部をガラスにして自然光を取り入れることで船内を明るくしている。同フェリーはチャーターもでき、会社のイベントや結婚式などにも対応する。スターフェリーでは6年で投資分を回収したいとしている。
香港ディズニーまでのルートは、尖沙咀を出発し、西九龍文化区(West Kowloon Cultural District)、葵涌(Kwai Chung)のコンテナターミナル、青馬大橋(Tsing Ma Bridge)などを経由し約45分かけて到着する。料金は食事込みの往復のパッケージとして180~200ドルの価格帯で販売する予定。