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香港在住アーティスト足立あゆみさんの個展「ripple 波紋」 刹那をテーマに

角度により見え方が変化する「波紋」

角度により見え方が変化する「波紋」

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 中環のギャラリー「Artouch Gallery」(LG Shop C2, No.89-95, Hollywood road)で8月25日、日本人アーティスト足立あゆみさんの展示会「ripple 波紋」が始まった。

ワイヤーの影も作品の一部に

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 兵庫県出身の足立さんは大阪芸術大学を卒業後、1996年から拠点を香港に移し活動している。今回の個展は、2015年と2016年にそれぞれ開催した個展「刹那 satt naa = 0.013 seconds」「影響 Influence of 0.013"」の要素も融合させたもので、インスタレーションで作品を表現する。「刹那(せつな)」とは、仏教思想における極めて短い時間を表した単位を指し、秒数でいうと0.013秒に相当するといい、刹那の間に、あらゆるものが生まれては消えるというサイクルが繰り返されるという考えを表現。「刹那という言葉だけ聞くと、日本人は『切ない』イメージを思い浮かべてしまうかもしれないが、中華圏には元々刹那という言葉が一般的に使われる。刹那から、一つの宇宙が誕生し消滅するまでの期間といわれる『劫(こう)』までの間に生じるさまざまな事柄や、そこから生まれるものを表現した」と作品への思いを語る。

 今回のテーマである「波紋」は、水一滴が落ちる現象が非常に短い間に起こるものであり、水滴によって生まれる波紋もまた、同じ形をとどめることなくすぐ消えることを「刹那」に結びつけた。ギャラリーには26点の作品を展示し、波紋の映像を映し出すスクリーンのほか、スピーカーからは水が水面にポタッと落ちる音も出す演出で、耳でも作品を感じられる空間に仕上げた。

 作品は薄い鏡をキャンバス代わりにし描くという。鏡の上に糊やベースコートを重ね、水彩絵の具などで色付けした後、表面を削ることで波紋の線を創り出す。下地が鏡になっているため、鏡が見えている部分に照明が反射し、まるで水面に光がキラキラと当たっているかのように見える。見る角度によって異なった作品が生まれるのも特徴の一つだ。併せて木の年輪を表した作品も展示。「時間の長さは違うが、年輪も次から次へと姿を変え、水が創り出す波紋に似ているところもある」と足立さん。作品に使われる色は全て、空か水の色をイメージしたという。

 同展では、昨年の個展「影響 Influence of 0.013"」でも展示した、天井からつるされた、白いワイヤーをいくつも組み合わせた作品の一部も用意する。ワイヤーで作られた一つ一つの塊は泡の表面積最小のセルを表しており、これらも照明が当たることで独特の影が生まれるという。「泡も極めて短い間しか存在できないもの。刹那の中で繰り返される生成消滅と、それらが他へ及ぼす影響を影として表している。波紋にちなみ、今回は銀色のワイヤーも取り入れた」と足立さん。「香港はスペースの問題もあるが、今後はこのワイヤーを使った大きな作品に取り組んでみたい」と意気込む。

 開催時間は12時~19時。入場無料。9月17日まで。

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