公共空間を芸術作品で満たし、街を活性化させようと、さまざまアートイベントが盛んに行われている香港で、中環(セントラル)の皇后像広場(Chater Road, Central)に現在、巨大な象のオブジェが出現している。
植民地時代の歴史を物語る皇后像広場は、マーガレット王女の来訪を記念して造られた公園で、市民の憩いの場として親しまれる。毎年開催されるフレンチアートの祭典「Le French May」の一環として、5月21日から約4週間にわたり、アート展「モーセ五書(Pentateuque)」が同広場で行われ、フランス人若手アーティスト、ファビアン・メレルさんが手掛けた高さ5メートルものシリコン製の象が世界初公開された。
約3メートル前後の通常の象の大きさに対し、少し大きめのサイズで、金融街で高層ビルが乱立する中、突如広がるスペースに独特な雰囲気を醸し出す。
象のオブジェの製作期間は5カ月。旧約聖書の最初の5つの書である「モーセ五書」からインスピレーションを受け、メレルさんが昨年完成させた同名の絵画に基づいて作られたもの。男の人が自分より何倍も大きい象を背負うという滑稽な造形で、信仰や文化、世間体など外部からの社会的圧力によって苦しめられている人々を表し、見る者に鋭く問いかけるのが狙いだという。
初日から熱いまなざしが注がれる同展では、カメラを構えて撮影する市民の姿が見られる。「世の中に不満はあるが、象だったりほかの芸術品だったり楽しい作品を見ると悩みも吹き飛ばされそう」と、観客のリーさんはポジティブな視点で作品を鑑賞していた。
観賞無料。展示は6月15日まで。