日本貿易振興機構(ジェトロ)は3月3日、「香港における食品中の残留農薬規制」に関するセミナーを尖沙咀香港歴史博物館レクチャーホールで開催した。香港政府食物環境衛生署食物安全センター(CFS)との共催。
香港における食品中の残留農薬を規制する枠組み「Pesticide Residues in Food Regulation」は2012年6月に成立し、2年間の猶予期間を経て今年8月1日に施行される。日本では食品中に残留する農薬などが人の健康に害を及ぼすことがないよう、厚生労働省が残留基準を設定。農薬が基準値を超えて残留する食品の販売、輸入などは食品衛生法により禁止しているが、これまで香港では食品中の残留農薬を規制する特定の法規制が存在しなかった。
しかし、消費者の健康確保や国際基準との調和の推進を目的として初めて法規制が整備されることとなり、製造業はもとより貿易業、流通業など多方面への影響が予想され、香港で食品を取り扱う人から関心が集まっている。
説明会はセミナー2部と質疑応答による3部構成。講師に香港食物安全中心のサイエンティフィックオフィサーのディッキー・チャン(Dicky CHAN)さんとジョアン・ヤウ(Joan YAU)さんを招いて、規制の概要とガイドラインの説明がなされた。基本的には香港基準と国際基準との整合を促進する意味から、主な枠組みは国際的な食品規格「コーデックス(Codex)」を採用。適用は香港内で販売、消費されるものに限る。再輸出のために輸入される食品には適用されないという。
会場に集まったのは食品事業関係者を中心とする約60人。質疑応答では「例えばストロベリーキャンディーなど果実が1~2パーセントのものでも適用されるのか」との問いに、担当官が「食品である限り全てのものに適用され、使用される一つ一つの原材料で判断する」とした。「混合食品など全ての材料をテストするのは不可能だ」という意見に対しては、「そのために輸入業者や製造元、生産者に確認して成分に関する書類などをもらう働き掛けをすることが大切」と回答した。
同センターによると、ランダムチェックがあり、違反の場合は最高でレベル5の罰金(5万香港ドル)および6カ月の禁錮刑を課せられる可能性もあるという。香港政府担当官は「自由港である香港は、より販売事業者の高い意識と大本の生産者、取り次ぐサプライヤーへの働き掛けが重要になる」とあらためて強調した。
食物安全センターは関連業界に対しガイドラインを作成し、オンラインで検索可能なデータベースも用意する。小冊子は3月半ば完成予定。また、香港内で最終製品を検査できるラボも認可していくと発表した。