
香港政府は7月18日、官報で2026年内にタクシーに2種類の電子決済、車載カメラ、GPSなどを搭載することを義務化すると発表した。これにより支払い方法が多様化されるほか、乗車拒否がしにくくなるなど、タクシーに関するサービス改善が期待される。
香港のタクシーのサービスについては、乗車拒否、わざと遠回りする、1ドル以下のお釣りをわざと返さないなど、良くない面が残っていた。そうした背景から香港ではライドシェアサービス Uberが人気となっている側面がある。
香港政府としては、市民の不評のみならず、観光客にとって使い勝手が悪ければ観光都市としてダメージを受けることから、タクシー業界の改善に乗り出した。その核となるのが「三寶」と電子決済である。
三寶とは「録音機能付きでかつ車内外を撮影する車載カメラ」「ドライビングレコーダー」「GPS」の3つを指す。車載カメラによって、仮にドライバーと客のいさかいが起こった時に解決する手段になるほか、乗車拒否を減少させる役目を果たす。映像は法律でプライバシーが保護され、権限のある人のみが閲覧できる。ドライビングレコーダーは、日本同様に交通事故が発生した時などに採用されるほか、ドライバーが交通ルールを違反したかどうかも判別できる。GPSは、運転手がわざと遠回りして乗車料金を増加させようとする試みを防ぐ意図がある。
電子決済は、これまでも一部のタクシーで提供されてきたが任意だったため、義務化することになった。ドライバーは、最低2種類の電子決済システムを用意しなければならない。QRコードは、AlipayHK、WeChat Pay HK、BoC Payで、非QRコードは八達通(Octopus)、クレジットカード、FPSを想定している。
これにより、支払い面において、香港市民にも観光客にも、より使いやすくなるほか、政府としては、一部問題となっている白タクが選ばれる機会が減少することに期待を寄せる。
ただし、電子決済のうち、どの2種類を選ぶかは運転手が任意で決めるため、香港で最も広まっているオクトパスが必ずしも使える保証はない。香港の場合、タクシーを運転するにはライセンスが必要で、そのライセンスを購入するまたは借りるというケースが多く、一種の個人タクシーのような状況が背景にあるためだ。タクシーに搭載する費用は3,000~5,000香港ドルほどかかることから、電子決済業者は手数料を無料、または低くするなどして、財政的な負担を減らす考え。
申請は2025年第4四半期から始まる。三寶は2026年内にサービスを提供することが求められ、電子決済については2026年4月1日開始とした。これらのデジタルデバイス搭載の義務化により、公務員が「秘密の」副業をしたり、タクシードライバーが収入を過少申告をして、香港政府が提供する何らかの優遇策を受けたりする人がいたが、「これらもなくなるだろう」としている。