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香港のタクシーに「オクトパス」導入促進へ 複数社の決済手段を一本化

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 香港の交通系のICカード「八達通(Octopus)」は1月11日、自社の決済システムを「銀聯(UnionPay)」、中国本土の電子決済サービス「支付寶(Alipay)」とその香港版である「支付寶香港(Alipay HK)」に支払いプラットフォームを開放放すると発表した。これにより、1つの決済システムで複数企業の電子マネーサービスを使うことができることから、タクシーのキャッシュレス化も進むと期待される。

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 香港のタクシーの電子決済は、2017年ごろからAlipayのほか「騰訊(Tencent)」の「微信支付(WeChat Pay)」、2018年になるとオクトパスがアンドロイド用スマートフォンに開発した「O! ePay」が導入されるなど、現金以外の支払いサービスが使えるようになった。2023年の8月からは、深センの交通ICカードである「深●通」が統合された「互通行」の発行を始めるなど、サービスの拡充に努めてきた。香港内は1万8163台のタクシーが稼働しているが、現実問題としてオクトパスを導入されていないように見えるタクシーが多いものの、政府への登録上ではタクシーの台数より商用アプリの申請数の方が既に上回っている。

 ただ、決済用のアプリをインストールしたスマートフォン、QRコードや電子マネーを読み取るカードリーダーなどの複数のデバイスをタクシーに搭載する必要があり、導入コストや狭い車内における取り付けなどの点で問題もあった。例えば、タクシーAはオクトパスだけ、タクシーBはAlipay HKのみ使えるなど、車両によってサービスに違いがある点は利用客の混乱を招きかねない状況だった。そこでオクトパスとしては、同社が用意したデバイス1つでオクトパス以外の3社のサービスも利用できるようにするようにし、タクシーにおける電子支払いシステムのプラットフォーマーを目指す。

 既に2万1000人以上のタクシードライバーが商用版のオクトパスサービスを活用しており、システムのアップデートをするだけで、拡充されたサービスを利用することができる。決済は、タクシードライバーがアプリ内に乗車料金を入力し、乗客はカードリーダーにタップするかQRコードをスキャンして支払いを済ませるという、従来の方法で決済できる。

 オクトパスとしては利用促進を図るため、口座にお金を移動させる際に手数料を免除しているが、これを2025年まで継続する。加えてタクシー運転手は3月31日までに同僚や同業者に商用版オクトパスを紹介し、加入したドライバーが30日以内に22香港ドルのオクトパスを使った決済を5回すると、両者に100香港ドルを還付(最大10回、1,000香港ドル)するプロモーションも行う。新規加入者には決済デバイスを無料で配布するほか、既存ドライバーと同じように2025年まで手数料を減免する。

 香港のタクシー業界は、現在もセント単位の釣りはドライバーが客に戻さなくてもよいという変わった慣習があり、乗客の不満の源泉になっていたほか、「たとえ少額でも釣りは釣りとして客に戻すべき」と考える乗客の中には釣りを返すことを要求する客もいた。電子決済ではそうしたことが発生しないため、乗客側からは歓迎の声が聞かれる。

 今後はどのタクシーに乗っても、基本的に4社のサービスが利用できることになり、特に中国本土を中心とした観光客が恩恵を受けるものと見られている。スマートシティー化を推進している香港政府も歓迎の意向を示す。

 ●=土へんに川

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