
アメリカのコンサート大手「Live Nation」が8月14日、香港・九龍に新たな音楽施設「TIDES(タイドス)」の開業を発表した。「AEON STYLE」などが入る黄埔の船型複合施設「Whampoa(黄埔號)」に、最大1500人を収容できる中規模ライブ会場を年内に開業する。
アーティストやプロモーターが効率的にイベントを開催できる「Plug & Play」型の設計が特徴
今回の発表は、昨年6月に閉鎖された「KITEC(九龍湾国際展貿中心)」に代わる音楽の拠点として注目を集めている。KITECの「Star Hall」は3600人を収容でき、日本人も含め多くのアーティストがステージに立ってきたが、KITEC閉鎖により、香港の中規模ライブ市場に大きな空白が生まれていた。
TIDESは1階とU1階に位置し、音響・照明・ステージ設備を常設。アーティストやプロモーターが効率的にイベントを開催できる「Plug & Play」型の設計を特徴とする。VIPラウンジやアーティスト控室も完備し、年間最大250日以上のイベント開催を見込む。コンサートのほか、ブランドイベント、企業向け催事、中規模の舞台公演など、多様な用途に対応していく。
Live Nation Venue Development Asiaのステファニー・バックス(Stephanie Bax)代表は「TIDESは、香港をツアーに組み込むための理想的な選択肢となる。観客との距離感を重視した設計により、ファンとのつながりを深める場としても最適」と話す。
香港には、「AsiaWorld-Expo」(1万4000人収容)や「Kai Tak Sports Park」(5万人収容)などの大型施設も存在する。ColdplayやBlackpinkなどの世界的アーティストがこれらの会場で公演を行ってきたが、規模が大きすぎるため、日本人アーティストや成長途上のアーティストやインディーズバンドには不向きだった。
一方、「The Wanch」(湾仔)、「Fringe Club」(中環)、「Lost Stars」(尖沙咀)などの小規模ライブハウスも存在し、これらの施設は、ジャズ、ロック、インディーなど、ジャンルを問わず観客との距離が近いライブ体験を提供している。
TIDESは、その中間を担う存在として、香港のライブエンタメ市場の多様性を支える役割を果たす。香港演藝業協會の許萍心(Lisa Hui Ping-Sum)会長も「TIDESは香港の活気あるパフォーミングアーツ文化を支える新たな拠点として、地元の才能育成にも貢献するだろう」と期待を寄せる。
Live Nationは、TIDESを通じて香港のライブエンタメ市場に新たな価値を提供し、スポンサーやブランドとの連携機会も広げていく方針だという。