「リトルタイ」と呼ばれるほどタイ料理店が点在する香港・九龍城の一角に2月2日、ベトナムのバゲットサンド専門店「Banh Mi(バインミー)」(G/F, 49 Lung Kong Rd, Kowloon City, KLN TEL:2360-2883)がオープンした。
飲食店が立ち並ぶ通りから離れ、老人ホームや質屋などが並ぶ人の行き来が少ない道で同店を切り盛りするのは、ニューヨークに留学経験をもつ2人姉妹。
世界各国の料理が勢ぞろい、進んだ食文化が育まれるニューヨークに長年住んだ2人が、どんな料理よりもこよなく愛するのは、ベトナムのバゲットサンド「バインミー」。香港に戻り、忘れられないあの味を再現しようという思いで起業を決意した。
「食材が簡単なのに変化に富んだバインミーの味と食感がたまらない。ニューヨークで食べたあの味をもう一度食べたいと思った」と話すのは、妹の小朱さん。帰国後さまざまなベトナム料理店に足を運んだが、どことなく理想と違ったという。「料理が好きなので、うちならではのバインミーを作りたいと思い起業した」とオープンの経緯を語る。
2人共、飲食店で働いた経験がなかったため、ベトナムでバインミーの作り方をあらためて学び、その後香港のフランス料理店で働きながら店の運営や調理法を身に付けた。フランス料理店では、長時間をかけて煮込む料理や盛りつけなども覚えたという。
バインミーは全12種類。中でも定番の「Pate, Vietnam Sausage Baguette」(58香港ドル)は、すでにベトナム人の客からも好評を得ているという。作り方は、新鮮な豚レバーをペースト状にし、それに甘酢に漬けた大根、ニンジン、キュウリ、ひと晩味付けをして炒めた豚のミンチ、豚の耳が入ったベトナム産ソーセージを挟んだ物。
「具は伝統的なバインミーと変わらないが、うちならではのおいしさの秘密は、アレンジした味付けにある」と小朱さん。例えば、マヨネーズを使い甘酸っぱさを足すことで、具をたくさん使いながらも重すぎると感じさせないように工夫をしているという。ほかにも、カニみそをたっぷり味わえることで満腹感もあり、香港人客に人気がある「Deep Fried Soft-Shell Crab Baguette」(88香港ドル)は、 他店より一回り大きい重さ100グラムもあるソフトシェルクラブを使う。
開業早々、週末には100個のバインミーが売れるほどの話題を集めている同店には、もうひとつ欠かせない要素がある。それは、姉の大朱さんが作っているコーヒーだ。人気の「Rose Tea Latte」(30香港ドル)は、フランス産のバラでアクセントをつける一方、香港風ミルクティーのような濃厚なお茶の味わいが楽しめる。
このほか、ベトナム式ドリッパーでコーヒーを抽出する「Vietnamese Dripping Coffee 」もお薦めという。「妹は料理が得意で安心で任せられるから、私も自分の趣味を生かし、バインミーに合う飲み物を作りたい。私たちの目標は、『わざわざ行く価値がある店』であること。」と姉の大朱さん。
営業時間は11時30分~22時。月曜定休。