香港政府は2017年中に18歳未満のアルコールの購入を禁止する法律を定めたい考えということが1月21日、地元メディアで明らかになった。香港の法律では現在、18歳以上のアルコール摂取が認められ、18歳未満でもアルコールを購入する事ができる。
香港のアルコールに関する法律である「應課税品(酒類)規例、第109B章(DUTIABLE COMMODITIES (LIQUOR) REGULATIONS, CAP 109B)」では、18歳以上でないとアルコール類の摂取は認められていないが、購入に関しての規定はない。例えば親が子どもにビールのおつかいを頼んでも購入が可能だった。
喫煙に関しては、法律で喫煙可能な年齢が定められていないが、「控煙法例(Tobacco Control Legislation)」第18項に「いかなる人物もタバコ産品を18歳未満の者に販売とプロモーションをしてはいけない」と定め、入手方法を制限することで青少年への拡大を防ごうとしている。しかも香港の場合、アヘン戦争で英国が清に勝利したことで香港が割譲されたという歴史もあり、「吸う」という行為に対しては敏感だ。香港は中国返還後、世界の動向と同じで全体の喫煙率が低下傾向にある。しかし、未成年者の喫煙率が上昇傾向を示したこともあり、タバコ税のさらなる課税にも動き、青年、未成年者の両方の喫煙率を一気に下げる方策に出た。
1970年代に徴収を始めたタバコ税だが、最近の例を見ると、マールボロの場合2006年は25ドルだったが2016年は57ドルにと10年で2倍以上の値上げとなり、未成年者にとっての負担は成人の比ではなくなった。タバコの免税の範囲は19本で、通常1箱は20本入りのため新しいタバコは全て免税対象にならない。いずれしろ、アルコールと喫煙ともに法律に不備があったといえる。
アルコールに関してはユニークな背景もある。中華系はアルコールには寛容な面があり中国本土に行けば飲酒文化は日本のようにかなり市民に浸透している。逆に香港人は中華系でありながらアルコールをあまり多く飲まないともいわれている。道端での嘔吐(おうと)や路上で寝てしまうような人を見かける事は日本と比べて圧倒的に少なく、家で毎晩晩酌をする家庭も多くはない。それが制定を二の次にしてきた面がある。
香港は酒税が低くビールなどは日本より安く購入できるほか、2008年からはワインの関税がゼロになりワインが求めやすくなった。
しかし、そうした環境は結果的に未成年にとって悪影響を及ぼした。「保安局禁毒處(Narcotics Division, Security Bureau)」は実態調査を行い、2014-15年版によると、56.2%の未成年が飲酒の経験があると答え、そのうち21.9%が10歳以下という結果だった。さらに、7.4%がアルコールとタバコの両方の経験があるとし、2%は麻薬の経験があるということで香港社会に衝撃を与えた。
2016年には「衛生防護中心(Centre for Health Protection)」が未成年者1630人を対象に調査を実施。うち43.1%の未成年が初めてアルコールを飲んだ年齢は18歳以下と答え、うち66%は週3回以上飲んだ経験があり、深酒や一気飲みの経験をしたことのある数値も高かった事を明らかにした。セブン-イレブンなどは、自主的に18歳未満の未成年者にアルコールを売らないという方針を採っているが、法律で定められていないため、スタッフが客に対して身分証の提示を求めにくいという現実がある。
中国では2006年に18歳未満へのアルコールの販売を禁止する法律を定めたほか、シンガポールでは2015年4月1日から年齢にかかわらず22時30分から翌朝7時まで小売店でのアルコールの販売と公共の場での飲酒を禁止している。数年前から一部の立法会議員から法制化を求める声が上がっていたが選挙制度改革などほかの重要案件の影響もあり、いまだに実現していないため、ついに法制化が実現するかどうか注目される。