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香港のフードデリバリー事情【第1回 foodpanda Hong Kong】

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 日本と比較して新型コロナウイルスの拡大は落ち着いている香港だが、現在でも飲食店に対する規制などは残る。もともと外食が中心の香港の飲食事情について、今回のパンデミックはどのような変化をもたらしたのか、香港のフードデリバリー業者にインタビューした内容をシリーズで特集する。第1回はグローバル展開するフードデリバリーサービス大手として知られている「foodpanda」から、香港市場について、foodpanda Hong Kong董事總經理Ryan Lai(賴偉昕)さんに話を聞いた。

 香港拠点では、現在1万2000店以上のレストランと連携しており、さまざまなジャンルの中で、特に人気なのがアジアフードだという。今年の初めから7月まで、日本食の注文数は中華料理の注文数に追い付く勢いを見せ、中にはスシロー、華御結(はなむすび)、丸亀製麺、一風堂と味千ラーメンなどが人気を博している。「生活リズムが早く、忙しい香港人にとって重要なのは配達スピード」と頼さんは香港生まれ、香港育ちならではのコメントを寄せる。「多くの香港人は食にこだわると同時に、金銭面に対しても厳しい目を持つため、市場は飲食店の選択と値段に対して敏感になる。こうした特徴に対し、サービス範囲の向上、飲食店の多様性、デリバリーシステムの改善など、マーケットの需要に応じて資源をどんどん投入してきた。そして、デリバリー時間は最速20分以内に配達すること、割引のプロモーションを提供することで、市場の要求を満たすように努力してきた」と賴さんは最新サービス内容とプロモーションについて説明する。

 最近は月額プラン「pandapro」で、会員が割安な価格で買い物ができるサービスを展開している。3月中旬にローンチして以来、7月中旬までに会員数は既に最初の月の16倍になった。「ローカルの顧客をよく知っているからこそ、彼らのリアルなニーズが分かる。そのためには先進的なテクノロジーやデータ分析が必要だけでなく、会社自体も社会の変化を把握しなければならない。食事のコストを軽減すると同時に、サービスの質の向上や使用経験の増加を目指し、積極的に資源を投入している。長期的に見ればこのそれぞれの要素は顧客、デリバリーチーム、飲食店などの各関係者にも有利だからだ。多元的な業務を展開しながら、バランスを取ることも必要不可欠。これはデリバリープラットフォームが直面する問題だけでなく、いかなる会社に対しても簡単なことではない」。それぞれの関係者のニーズを理解するよう、各部署のスタッフに最前線の仕事を体験してもらうだけでなく、賴さん自身もpandamartの倉庫スタッフとして実体験したことなどを生かす。「なるべく早くデリバリーチームに出せるよう、倉庫スタッフはわずか数分で素早く注文商品を集めており、そのスピードと慣れていることに感心した」と同社のチームワークについて話す。

 フードデリバリーから始め、foodpanda香港のポジションは、ローカルにおけるワンストップ・ライフスタイル・プラットフォームとして、Qコマース(Quick Commerce)を中心に展開していく。フードデリバリーやセルフピックアップのほか、顧客がお菓子やソフトドリンク、アイスクリーム、キッチン用品、ベーキング材料、清掃用品などの生活雑貨を購入したい場合、foodpandaのスマホアプリを通して「foodpanda mall」や「pandamart」で簡単に注文ができる。「深夜のドラマ時間やサッカーの観戦でお菓子を食べたくなったのに家に何もがないときや、朝になってから歯磨き粉が使い切ったことが分かり早く欲しいときにも、いつでもどこでも、突然発生する日用品のニーズに対応できるよう、24時間のサービス、最速10分で届けることを目指す。4000種類以上の商品で、リアルタイムで顧客のニーズを満たすことが可能」と賴さんは具体的なイメージを加えながら説明する。

 「普段の宅配は最低2~3日がかかり、配達の時間も予測できない。配達を受け取るために半日の自宅で待機しなければならないケースもある香港では、時間の有効活用ができないという顧客の声があったことから、日用品のデリバリーサービスをスタートした。」という。Qコマースと成熟したデリバリーネットワークにより、foodpanda香港は顧客の時間を省くことを目指し、現在すでに4000以上の商品を提供できる体制にあり、中にはアサヒビール、新紀元のたまご、明治のカップアイスクリームや北海道特選3.6牛乳など人気が高い日本商品がたくさんあるという。「24時間サービス、最速10分お届け」による顧客満足度が高いため、今後はより多くのブランドとコラボし、より多くの商品を提供できるように展開していきたいとする。  

 コロナ禍の状況と政府の防疫措置に対応する必要から、運営戦略を調整しながら関係者へ即時的な支援も求められる困難な時期だったが、デリバリープラットフォームとしてfoodpanda香港は、シーズンごとの新規客数が6桁の大幅増を記録すると同時に、顧客1人当たりの使用回数も増え、月間使用数が昨年より60%増を記録している。「リモートワークや政府によるイートイン時間制限の影響で、朝食と深夜でのフードデリバリーが昨年より8割も増加した。かつてのように週末の利用に集中することなく、平日の注文数も明らかに増加した」という。そのほか、行列などの待ち時間を省きたい人も多く、アプリを通じて注文後のセルフピックアップをする数も昨年の第1四半期と比べて数倍まで拡大するなど、右肩上がりで推移する。「各地域でのアクティブユーザー数や注文数も、まだ増加する余地がある。フードデリバリーは『イートインができないから』の選択だと思われがちだが、現在ではオンラインプラットフォームの使用習慣がすでに定着し、デリバリーアプリも使い慣れている一つの食事体験となった。防疫措置が続く中、友達や同僚との食事会も、飲食店の検索のほか、フードデリバリーのURLをシェアして各自の好みをまとめて注文することもあり、それが一つのライフスタイルにもなっている」 と説明する。

 コロナ後の展望については、Qコマースをベースにしたサービスの提供に重心を置き、中には日用品、つまり「foodpanda mall」と「pandamart」が業務の中心になっていくと分析している。foodpanda mallの非食品類の注文も既に3倍となっているが、「先進的なテクノロジーの有効活用で、消費者へ利便性を提供することは弊社が業界のためにできること。foodpanda mallの小売店は優秀な商品とオフラインネットワークを持ち、そこで弊社のオンラインデリバリーシステムを加えれば、foodpandaユーザーにリーチでき、Win-winな体制を作ることができ、これが業界の進歩につながるでは。現在は既に無印良品、そごう、イオン、APITA、YATAやヤマザキパンなど数々の日本ブランドとコラボしており、今後も香港での日本ブランドに積極的に携わっていきたい」と話す。

 今後の展望として、SDGsは必然的に考えていく必要があり、最近はエコなフードデリバリーパッケージも提供をするほか、foodpanda香港はWWF-Hong Kongの「Plastic ACTion」に参加することで、「カトラリー類が不要」をデフォルトオプションと設定し、今年6月1日までに既に5000万セットの使い捨てのプラスティックケースの削減を果たしていることも挙げた。

 親会社Delivery Heroのアジア太平洋地域担当者Jakob Angeleさんによると、foodpandaは中国を除くアジア地域で最大のデリバリー業者となっており、今後は生活雑貨、日用品などに展開を強化する予定だ。Foodpanda香港の場合、第三者プラットフォーム「measureable ai」や「app annie」のデータによると、アクティブユーザーや市場占有率もローカルの同業者より優勢があり、多くの香港人に支えられているプラットフォームである。

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