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香港政府、2018‐19年度財政予算案発表 所得税減免、BR控除など盛り込む

2019-20年度の予算案を発表された香港

2019-20年度の予算案を発表された香港

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 陳茂波(Paul Chan)財政長官は2月27日、2019-20年度の財政予算案を発表した。それによると、歳入は前年度の6,045億香港ドルから6,261億香港ドルに増加し、歳出は5,579億香港ドルから6,078億香港ドルに増えた。財政備蓄は2019-20年度末に1兆1,784億香港ドルに達すると予測している。

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 香港政府は2018年の地内総生産(GDP)は3%とし、過去10年平均の2.8%をわずかに上回った。2019年は、米中の経済摩擦により両国の景気減速、日本は緩やかな経済成長、シンガポール、台湾、韓国も経済成長率が緩慢になり、ブレグジットによる経済的混乱の可能性、連邦準備制度理事会(FRB)の利上げに関係する要因から経済は2~3%の成長になるだろうと推測。2020年~23年の間の平均の経済成長率は3%と予想している。

 歳出を分野別に見ると、教育の1,240億香港ドルが最も多く、社会福祉に972億香港ドル、その他が901億香港ドル、衛生が886億香港ドルと続いた。教育という将来の香港を重要視しつつ、社会福祉と医療費を含む衛生が合わせて歳出の約30%を占めており、高齢化社会を迎え、この分野に力を入れざる得ない香港の現実を表している配分となった。インフラ整備が791億香港ドル、保安に568億香港ドル、経済が385億香港ドル、環境・食物が335億香港ドルだった。

 個人を対象に見ると前年度は上限を3万ドルとして予定納税額の75%を減免していたが、今年度は2年度前の同じ水準の2万ドルに引き下げられた。第4四半期には1,500香港ドルを上限として香港政府に支払う土地のレートが免除される。財政的な支援が必要な学生に対して8億9,000万香港ドルの予算を組み2,500香港ドルを支給する。

 法人では、事業所得税75%が減免されるが、上限は個人所得税と同じく3万ドルから2万ドルに引き下げられる。商業登記費(Business Registration)の登記料は免除され、140万人の経営者が恩恵を受ける。ブランド向上、企業価値向上、市場開拓を目的とした基金である「専攻基金(BUD Fund)」は支援の上限を200万ドルとしていたが300万ドルにまで引き上げた。

 公営住宅は今後5年間で10万400戸を建設するほか、民間の住宅は2019年から2023年の間は年平均で1万8800戸が完成するとしている。医療関係に予算が多く配分されているが、理由は人手不足による医師や看護婦の減少で、それが医療サービスの質の低下を招くという負のスパイラルに陥っていることからその対策費的な意味合いが強い。予算案でも報酬の増加、夜間サービス体制の強化、専門の医療関係者のさらなる増加を上げている。また、50億香港ドルを投下して医療機器の更新や先端の医療機器の購入に当てる。

 香港政府は電気自動車(EV)買い替えへの補助金政策を推進する方針を固めた。将来的には25万台を超えるEVが走ることを想定し、充電設備の拡充が必須になったため1億2,000万香港ドル投じ、2022年度までに充電器を1000基余り増設して合計で1700基にしたい考えだ。観光業全体には3億5,300万香港ドルの予算を投入しトレイルの道などを整備するほか、無料Wi-Fiスポットを拡充する。それに関連して、来る第5世代移動通信システム(5G)に必要な設備投資への準備もするとしている。

 香港政府は「クリエーティビティー」に関する産業に力を入れているが、映画産業では「電影発展基金(Film Development Fund)」に対して10億香港ドルを拠出するほか、深水●(Sham Shui Po)はファッション関係の問屋が集中していることから若者のファッションデザイナーを支援するセンターの建設を今年から始める計画で2023-24年度に完成させたい考えだ。

 ユニークなところでは「香港の都市の現代化を進める」として、前年度は「街市」の改善を組みこんだが、新年度からは、この先5年間で6億香港ドルを費やして公衆トイレを改修し、風通しを良くしたり、より衛生的に使えたりするようにするとしている。

深水●=土へんに歩

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