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国務院、粤港澳大湾区計画の綱要発表 一体化による香港の未来は?

国務院が粤港澳大湾区計画の綱要発表

国務院が粤港澳大湾区計画の綱要発表

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 中華人民共和国国務院は2月18日、香港、マカオ、広東省の経済協力および発展を目指す「粤港澳大湾区(Guangdong-Hong Kong-Macao Greater Bay Area)」についての綱領を発表した。科学技術、通信、金融など幅広い分野についての推進を提唱している。「一帯一路」とも絡んでおり、今後の展開が注目される。

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 大湾区は、2009年に発表された「珠江三角州地区改革発展規画綱要(2008~2020年)」と2010年に調印された「粤港合作框架協議」が基本で、2017年3月に開かれた第12期全国人民代表大会(全人代)において李克強首相が「粤港澳大湾区」の発展について言及し、事実上、国策のような形で推進されることになった。

 粤港澳大湾区の区域は、香港、マカオと広州、深?、東莞、珠海、仏山、恵州、中山、江門、肇慶という広東省珠江デルタ地域にある9都市で構成される。総人口は6900万人。面積は5万6000平方キロメートルと中国国土の0.6%に過ぎないが域内総生産(GDP)は1兆8,000億米ドルと中国のGDPの13%を占める巨大経済圏で、人口で言えばイギリスに匹敵し、面積はアイルランドとほぼ同じでGDPはオランダやインドネシアと同規模だ。他の世界的ベイエリアと比較すると「東京ベイ」の人口は4350万人、面積は3万6900平方キロメートル、GDPは1兆4,000億米ドル、「ニューヨークベイ」が2150万人、2万1500平方キロメートル、1兆2,000億米ドル…この2つと比べても大湾区の大きさが分かる。東京とニューヨークは第3次産業の割合が80%以上だが、大湾区はまだ55.6%で、今後、サービス産業にシフトしていくと、この数字はさらに伸びる可能性が大きい。

 綱要によると、「広州-深セン-香港-マカオ」科学技術革新回廊の建設を推進し、広東・香港・マカオ間の携帯電話の長距離・ローミング料金の引き下げも推進する。ビッグデータセンターと国際化革新プラットフォームの協同建設を行う。地域の枠を超えた人民元の利用規模、利用範囲の段階的拡大も提起した。一定の条件を満たした香港、マカオの銀行と保険会社が、深?の前海、広州の南沙、珠海の横琴に営業拠点を設立することを支援するという提言も行っている。さらに香港とマカオの両都市には金融、教育、法律・紛争処理、物流(陸海空)、中医薬、建築などの分野で特別開放するというのを盛り込んだ。珠江デルタの9市に勤務・居住し、定められた条件を満たした香港・マカオ出身者の子どもに、大陸部出身者と同じ義務教育と高校の教育を受ける権利を与えることの検討…などもある。

 中国・香港政府は積極的に推進しているが、香港樹仁大学、広東省社会科学院、広東発展研究資料庫が2017年に合同で香港の若者を対象に粤港澳大湾区についての認知度調査を行い、香港の55.2%、広東省の59.1%が「知らない」と半数以上の人が存在を知らなかった。綱要では「1国2制度」、「港人治港」(香港人が香港を治める)、高度自治を堅持すると明示されているが、香港と中国の経済の一体化がより進むことになり、香港の経済的ポジションの低下や1国2制度の優位性が失われれるのでは、という懸念が一部の香港市民や政治家などから声が上がっている。

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