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林鄭月娥・行政長官が施政方針演説 混乱の香港社会の中、住宅問題を中心に注力

林鄭月娥(Carrie Lam)行政長官

林鄭月娥(Carrie Lam)行政長官

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 林鄭月娥(Carrie Lam)行政長官は10月16日、施政方針演説を行った。逃亡犯条例改正案に端を発した社会の不安定さを、政策を通じてどのようにして解決していくのか注目された。住宅・土地問題を中心に交通、教育、中小企業支援など幅広い分野にわたって政策が打たれている。

 今回、林鄭行政長官が立法会で施政方針演説をしている間、野党議員が叫んだり、プロジェクターを使いデモのスローガンである「五大訴求、欠一不可」(5つの要求は1つでも欠いてはならないの意)という文字を林鄭行政長官の後ろの壁に映したり、プラカードを掲げたりした。その結果、演説が2度にわたって中断したため、梁君彦立法会議長は休会を宣言。演説はビデオでの報告となった。今回のテーマは「珍惜香港 共建家園(Treasure Hong Kong: Our Home)」と香港とは宝物であり、自分たちの家でもあることを強調した。施政方針内でも述べたが、今年は準備する期間が足りなかったため、施政方針の資料の中国語版では全24ページと前年の93ページと比べて大幅に減少した。その分を絵や図表を充実させて理解してもらおうという考えが垣間見られた。

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 「前言」には9ページを割いた。デモ活動が4カ月以上続き、400回にわたるデモ行進や集会が行われたこと、1100人がけがをし、2200人以上が逮捕されたと語った。また、暴徒による極端な行為を非難し、違法行為について警察の行いを支持するとこれまでと同じ論調ながらも慎重に言葉を選んでいる。1国2制度を堅持する、自由の表現を保証する、法治は香港の核心的価値であるなどについては、これまでことあるごとに発言してきた内容をほぼ踏襲した。

 具体的な政策を見ると、香港市民の一番の関心事である住宅については、公営住宅と民間住宅の割合を60:40から70:30と公営の割合を増やし、50億香港ドル分の予算を確保。今後3年間で1万戸の公営住宅を供給する。一定の基準を満たした人のみが応募・入居できる公営住宅である綠表置居計画(GSH)は2020年に1万2000戸分を供給する。400万香港ドル~800万香港ドルのマンションを購入する場合、香港政府が出資する「香港按證保險(The HKMC Insurance)」を通じて最大で90%の住宅ローンをカバーする。

 交通では2019年1月から1カ月の交通費が400香港ドルを超えた場合、最大300香港ドルを上限に4分の1%が還元されるが、それを最大で400香港ドル、3分の1に引き上げる。地下鉄は東涌線の延長、屯門南までの延長などの計画を進め、早期の着工を目指す。

 技術関連では、スマートフォンの5Gのサービスについては2020年に開始できるようにする。同じテクノロジーでは、科学園(Science Park)と数碼港(Cyberport)で創業する企業を対象に73億香港ドルを確保して金銭的支援を行う。

 教育では幼稚園、小中学生に2,500香港ドルの教育費を支給するほか、香港内170カ所の公園・文化施設などの改修などを行う。11月下旬に行われる区議会選挙は延期がうわさされているが、「フェアで、オープンで、誠実な状況の中で行う」とした。

 米中貿易摩擦などの影響で2019年上半期の香港の経済成長率は0.5%となり、下半期にはデモの影響で観光や小売業界に大きな影響を与えた。その結果、通年の経済成長率は0~1%にとどまるだろうと予測。経済状況次第では、さらに追加支援的に施策が提示されてもおかしくはない状況だ。

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