香港政府は2月26日、陳茂波(Paul Chan)財政長官による財政予算案発表の中で、新型コロナウイルスによる新型肺炎への対策として、18歳以上の永久居民の資格を持つ香港市民に1万香港ドルを支給することを発表した。新型コロナウイルスによる新型肺炎は、香港では毎日1桁ではあるが感染者は増えている状況だが2003年のSARSの牛頭角(Ngau Tau Kok)などのようなスーパースプレッダーは発生しておらず、基本的に感染経路をたどることができる状況だ。日本は感染経路が不明なケースが増え、かつダイヤモンドプリンセス号の件があることから食物及衞生局(Food and Health Bureau)の陳肇始(Sophia Chan)局長は香港市民に「日本に行くのを避けたほうがいいだろう」と発言した。あくまでも提案という形だが、多くの市民が日本渡航に関しても不安を抱き始めている。
2月26日現在、香港での感染者が85人、死亡者は2人となっている。香港日本人社会または日本好きの香港人に話題となったのが2月24日に陳局長のほか、政制及内地事務局(Secretary for Constitutional and Mainland Affairs)の聶德權(Patrick Nip)局長、保安局(Security Bureau)の李家超(John Lee)局長による合同記者会見での発言だ。その中で陳局長は「日本とイタリアを訪れた香港居民と非香港居民に対して条件が許せば、香港入境後14日間は自宅待機し(観光客は滞在先となる)、検温を行い、外出する時は全行程でマスクをすることを提案する」と回答。つまり、香港政府として日本などが香港の規制対象としての基準に届けば、この方策を会議に諮ることを示唆したといえそうだ。また陳局長は「日本、イタリアのほかその他の国について注視しており、市民は新型肺炎が出現しているような地方に旅行やビジネスで訪れる事は避けるべき」と日本を名指ししており、今後の日本のインバウンドに影響を与えることは間違いなさそうな状況だ。
韓国についてはすでに感染が一気に拡大したことから不要不急の韓国訪問を避けるよう警告する2番目の警告「紅色外遊警示」を発したほか、過去14日間に韓国を訪れた非香港居民への入境禁止などの措置をとっており日本の状況次第では上記の建議を飛び越えて入境禁止の措置が取られる可能性も否定できない。
さらに香港政府は、学校の一時休校中措置を延期して4月20日以降に再開することを決めたほか、公務員の在宅勤務は3月1日まで延長するとした。
香港のフラッグシップキャリア、キャセイパシフィック航空は2月28日から沖縄線と釜山線、3月5日から新潟線、3月8日からオーストラリアのアデレード線の運航を一時休止することを明らかにした。財政予算案発表に先立ち立法会の財務委員会は2月21日、新型肺炎でダメージを受けている業界への財政支援のための基金、約300億香港ドルの予算案を賛成多数で可決した。主に飲食、飲食、運輸の業界を支援する。児童・生徒を送迎するスクールバスは企業が運営しており、それらで組織する「学童車協会」の林志平主席はスクールバスへの支払いを免除したり、半額にしたりしていることから「この状況が続けば倒産する送迎バス会社が出てくる心配がある」とした。
香港鉄路(MTR)は2月20日、2020年の運賃改定をしないことを明らかにした。八達通(Octopus)によるキャッシュバックのプロモーションは4月で終了予定だったが6月末まで延長するほか、MTRの全ての駅や所有しているショッピングモールなどの商業施設に入っている中小規模のテナントに対して2月と3月のテナント料を半額にする。地下鉄料金に関しては過去に2017年に料金は凍結させたが2018年に2017年分をまとめて引き上げている。MTRは「社会が大変であるために市民をサポートする」とコメントしており、2021年は2020年分を含めて改定する可能性もある。九龍巴士(KMB)はバス内とバスターミナルに消毒液を設置し始めている。
香港ジョッキークラブ(HKJC)は2月26日、3月1日・4日について、調教師、騎手、当直役員、関連職員、事前に予約したレース出場馬の馬主しか入場が認めず、入場前検温するとした。VIPの入場は認めない。