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香港政府、新型肺炎の本格的な対策に乗り出す 人の移動を制限し接触機会減らす

SARSを経験した香港ではその教訓を生かし、警戒レベルを3段階で最も高い「厳重(Serious)」から最上級の「緊急(Emergency)」に格上げ

SARSを経験した香港ではその教訓を生かし、警戒レベルを3段階で最も高い「厳重(Serious)」から最上級の「緊急(Emergency)」に格上げ

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 香港政府は武漢で発生した新型コロナウイルスによる新型肺炎の感染拡大を防ごうと1月27日、過去14日以内に湖北省を訪れた人と武漢を含む湖北省の住民は香港市民を除いて入境できないことを決めるなど、本格的な対策に乗り出した。同新型肺炎の感染が香港内で確認されたケースは1月27日現在、8人となっている。

 新型肺炎に関する動きは香港を含め、日本など世界的に2020年の旧正月が始まる1月25日の数日前から急きょ慌ただしくなった。特に武漢市政府が1月23日、肺炎の流行を食い止めるため公共交通機関の運行を一時停止すると発表して、事実上、街を封鎖したことと、人がたくさん集まる公共の場所では、マスク着用を義務づけたことが大きなインパクトとなった。

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 香港は、2003年に発生し299人が死亡した重症急性呼吸器症候群(SARS、厚生労働省検疫所によると最終的に世界では8069人が感染、775人が死亡)で対応に苦しみながらも感染症対策のノウハウを蓄積している。それは2009年に5月1日にメキシコからの旅行客1人が新型インフルエンザ患者と確認され、当時宿泊していた湾仔(Wan Chai)の維景酒店(Metropark Hotel)を封鎖したことでも生かされた。感染していない別の宿泊客も一緒に閉じ込められ、当時はやり過ぎという非難もあったが、結果的に感染を拡大させなかった。今回、まだ入居が始まっていない粉嶺(Fanling)の公営住宅の「暉明邨(Fai Ming Estate)」を隔離施設にすると発表し、周辺住民は反対する抗議活動が起こしているが、過去のこうした経験から実施に向けて動いている。

 香港政府は、過去14日以内に湖北省を訪れた人は香港市民を除いて入境できないことのほかにも、25日には警戒レベルを3段階で最も高い「厳重(Serious)」から最上級の「緊急(Emergency)」に格上げし、全ての出入境ポイントでの健康報告カードの提出を義務付けた。虚偽の報告を防ぐため、香港の条例の「第599章」は「預防及控制疾病條例(Prevention and Control of Disease Regulation)」という28ページから成る項目があり、妨害行為や健康についての虚偽報告をすれば罰金または6カ月の禁錮刑になる厳しい法律を制定している。

 ほかの対策としては、香港と武漢を往復する高速鉄道と航空便を無期限で停止し、2月16日まで幼稚園と小中学校を休校とすることを決めた。2月9日に開催予定だった香港マラソン、元宵節イベント、香港政府主催の春節期間内の行事は中止が発表されている。

 民間のイベントにも影響が出ており、俳優・歌手の劉徳華(アンディ・ラウ)さんが2月15日から28日までの間に12回予定していたコンサートを取り消したほか、香港ディズニーランドと海洋公園(Ocean Park)は1月26日から、東涌(Tung Chung)にあるケーブルカーの「昂坪360(Ngong Ping 360)も1月27日から無期限での運行停止を決めた。

 タイミング的に悪かったのは中国人が「民族大移動」を行う旧正月前に感染が拡大したことだが、中国政府が海外への団体旅行と航空券+宿泊の個人のパッケージ旅行の一部を1月27日から禁止したほか、不幸中の幸いだったのは逃亡犯条例改正案に関連して香港での滞在を予定する人が例年より少なかったことは、香港内での感染拡大に防止にポジティブな状況だ。香港市民はマスクの大量買いに走り、通常の何倍もの価格になるなど高騰しているが、現時点でSARSの経験から総じて平穏といえる状況で推移している。

 在香港日本国総領事館も在中国日本国大使館が緊急の帰国希望者調査を行っているため、中国湖北省に関連会社がある、または現地邦人と関係を持つ企業、該当する人への伝達などを呼び掛けている。