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香港政府、財政予算案を発表 目玉は現金支給と所得税、法人税100%減免など

香港政府、財政予算案の中にも新型コロナ肺炎対策も迅速に盛り込む

香港政府、財政予算案の中にも新型コロナ肺炎対策も迅速に盛り込む

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 陳茂波(Paul Chan)財政長官は2月26日、2020-21年度の財政予算案を発表した。目玉は既報の通り、18歳以上の永久居民の資格を持つ香港市民への1万香港ドル支給と個人所得税・法人税について上限を2万ドルとして100%減免する措置だ。

 歳入は前年度の6,261億香港ドルを予定していたが、逃亡犯条例改正案に端を発したデモの影響などで5,673億香港ドルにとどまった結果、378億香港ドルの赤字になった。赤字決算は15年ぶり。2020-21年度は歳入が前年とほぼ同じの5,725億香港ドルと見積もり、赤字は1,391億香港ドルに増えるとし、今後5年間は74~170億香港ドルの赤字決算になるだろうと予想する。  

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 財政備蓄は2019-20年度末に1兆1,331億香港ドルに達すると予測しているが、財政赤字が続けば備蓄も減ることにつながる。近年、香港政府は小さな政府というよりは大きな政府を志向しており、今後、高齢化社会がより進み社会保障費や福祉関連の予算が増えていくことから、経済成長が望めなくなった場合、財政的余裕が徐々に失われていきかねない状況を危惧する。

 香港政府は2019年の地内総生産(GDP)はマイナス1.2%としたが、原因として2019-20年度は米中の経済摩擦が継続したほか、デモによる経済的ダメージ、武漢で発生した新型肺炎が香港に波及するなど突発的な事案が続いたとした。一方、2020年のGDPはマイナス1.5%~プラス0.5%と見込む。新型肺炎がいつ収まるのかは見通せず、アメリカのみならずヨーロッパ経済も不安定とした。日本は10月消費税を増税に踏み切った影響で内需が減速しているなど、香港経済にとっては厳しい環境であることが要因としている。

 歳出を分野別に見ると、教育が全体の19.6%となる996億香港ドルが最も多く、社会福祉に939億香港ドル(シェア18.4%)、衛生が871億香港ドル(同17.1%)と続いた。従来通り、教育、社会福祉、衛生の3部門が不動のトップ3で全体の半数以上を占める55.1%となる。保安に552億香港ドル、環境・食物が219億香港ドル、経済が212億香港ドルで、これらの項目は、前年より減額された部門もあったものの、その幅は少なかった。しかし、インフラ整備が791億香港ドルから一気に309億香港ドルにまで減額され、赤字財政の影響をまともに受けた。

 個人を対象に見ると、18歳以上の永久居民に対して1万香港ドルを支給する。700万人が対象となり710億香港ドルの予算をつけた。所得税は、前年度は上限を2万ドルとして予定納税額の75%を減免していたが、今年は100%還付する。第4四半期には1,500香港ドルを上限として香港政府に支払う土地のレートも免除。公営住宅に住んでいる低所得者を対象に1カ月分の家賃を補助するほか、2021年に開催される進学受験テスト「香港中學文憑考試(HKDSE)」の受験料を無料にする。

 法人では、事業所得税は個人所得税と同じく2万ドルを上限に100%免除する。商業登記費(Business Registration)の登記料を免除するほか、周年申報表(Annual Return)の更新料を2年間免除する。140万社が恩恵を受けるとした。さらには200万香港ドルを上限とした政府による100%保証の低利ローンも盛り込んだ。

 住宅用途以外で利用されているところの電気代は5,000香港ドルを上限に4カ月間75%を補助する。同じく住宅用途以外で使われているオフィス、工場などの水道代は2万香港ドルを上限に4カ月間75%を補助する。環境問題が地球規模で叫ばれている中、リサイクル関連企業は6カ月間、家賃を補助する計画だ。

 住宅では、2019-20年度から2023-24年度の間に10万400件の建設を行うほか、民間の住宅は2010年から2024年の間は年平均で1万9600戸が完成するとしている。

 交通では、20億香港ドルの予算を割き、個人住宅に電気自動車用の充電器を付ける場合に補助金を付けるほか、8,000万香港ドルを投入して電気自動車のミニバスを走らせ走行実験を行う。ビクトリアハーバーでの電動フェリーの運航を推進するため3億5,000万香港ドルの予算を確保した。予算案には細かく書かれていないが、事実上、スターフェリーに委託して実験をすることになると予想されている。警察予算を前年比約25%増と大幅に増やしているのも今回の特徴だ。