外務省が海外で漫画文化の普及に貢献する漫画作家を顕彰する目的で創設した「国際漫画賞(International Manga Award)」の香港受賞者の授賞式が10月30日、総領事公邸で行われた。
同賞は日本から世界に広がる漫画文化を通じて国際交流と相互理解の輪を広げることを目的として、外務省が2007(平成19)年に創設したもの。今年で13回目を迎え、今回は66の国と地域から345点の応募があった。今年は最優秀賞作品イスラエルからの応募で、その他優秀賞3点もタイ、スペイン、ブラジルからと、世界各地からの応募作品が集まるようになっている。
香港・マカオからの応募は11点で、その中でブロンズアワード(入賞)に麥天傑(Mr.Tin Kit Mark)さんが選ばれた。麥さんの作品「TAO ZERO(非常道・零)」は前作「非常道」の続編として描かれたもので、仏教の「六道輪廻」に基づき、武術に長(た)け、義理を重んじる人々を主人公とした中国小説に出てくる武侠と妖怪の世界観を融合したファンタジー物語。受賞を受け、麥さんは「実は10年余り漫画を描くことから離れていた。しかし2016年に再び決心して、ここ数年間でいくつかの作品を出版してきた」と話し、「漫画や出版業に陰りを感じるが、できる限り創作活動を続け、香港における漫画産業の持続的な発展につなげたい」と入賞が励みになったと喜ぶ。
授賞式には第1回の最優秀賞受賞者李志清さんも出席。「Sun Zi’s Tactics(孫子兵法)」で知られる作品は、孫子が編み出す優れた兵法の数々、そして孫子の生涯を描いたもの。李さんも「日本の漫画も好きで、影響を受けてきた」と話す。
同賞受賞も背景に10月28日~11月3日、香港芸術センター3階で麥さんの新刊のイベント「●志傑 x 陸偉昌 x 麥天傑《崑崙異説》」が開催される。同作は1冊の本に香港の3人の漫画家の作品を組み込んだもので、この作品に収録されている昆侖山を舞台にした3つのファンタジックな物語を、それぞれ描く。ファンタジー、アクション、神秘的な要素も多く、漫画家3人の個性的な作風が楽しめる。会場では麥さんの原稿を展示やサイン会なども予定。受賞作品の原稿ほか、新刊「崑崙物語」なども展示・販売する。開館時間は9時~23時。入館無料。
これに加え、香港政府が設立したクリエーティブ専門機関「Create Hong Kong」は、尖沙咀の「漫畫星光大道」(アベニュー オブ コミック スターズ)を改修し、現有30体の漫画キャラの像をリニューアルして2021年までに2体を増設するが、今回入賞の麥さんをはじめ、香港の代表的な漫画家を紹介するセクションも設置する予定だという。
●=廣におおざと。