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香港の施政方針演説、中国との関係強化図る ジャンボレストランは海洋公園に寄贈

今年は延期をしていた施政方針演説を発表した香港

今年は延期をしていた施政方針演説を発表した香港

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 林鄭月娥(Carrie Lam)・行政長官は11月25日、施政方針演説を行った。新型コロナウイルスによる経済的ダメ―ジは中国との関係強化を図ることで補っていく方向性を前面に押し出し、具体的な香港内での経済対策については例年通り、住宅、金融、環境、文化芸術など幅広い分野をカバーした。

 施政方針演説は例年、毎年10月に行われるが、2019年から2020年にかけて起きたさまざまな混乱を受け、まず中央政府と協議をしてから政策を盛り込むとして、施政方針の発表を延期していた。

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 林鄭行政長官にとって4度目となる施政方針演説だが、9ページ目に「いち早く香港を難局から脱却させて、市民の信頼を取り戻すことが施政方針の主要な目的」と書かれている。

 中央政府の支持の下、政策を進めていくとし、香港、マカオ、広東省9市を1つの経済圏とする「●港澳大湾区(Guangdong-Hong Kong-Macao Greater Bay Area)」を経済的な政策の前面に押し出した。人材交流、金融などで大湾区を活用することで香港が発展していくとした。

 2020年6月30日制定された香港版国家安全維持法については、言論、集会、デモなどの自由に影響しないと懸念の払しょくに努めた。中国の国旗と国歌を敬う教育をするほか、国家の安全を意識させることにも力を入れるとした。公務員、立法会議員、政府関係者は国家や香港政府に忠誠を誓う義務を厳格化するため、関連する条例を改正する考えだ。論争になった三権分立について「行政主導と司法の独立は矛盾しない」とも語った。反政府デモについて2300人余りが起訴されたが、18歳以下の容疑者については、罪を犯したと認め、反省していることを前提に処遇を考慮するとした。

 香港政府は全国人民代表大会の常務委員会で示された香港の立法会議員の資格に関する新基準に基づき、民主派4人の議員資格を11月11日に失効させた。これに抗議して民主派議員15人が辞表を提出。残る43人の立法会議員のうち親中派が41人と議会のチェック機能が大幅に低下しており、このまま行けば、ほぼ政府の思い通りの条例が制定される可能性が高い。

 香港国際空港の第3滑走路が2022年に、それをコントロールするシステムが2024年に完成するほか、新しいロジスティクスセンターの建設が2023年に終わる。航天城(Sky City)は2021年から2027年にかけて段階的に完成させ、世界のハブ空港としての地位を維持したい考えだ。港珠澳大橋(HZMB)の創設に当たり税関などを設けるため人工島が造成されたが、そこに自動化した駐車場、香港國際航空學院(Hong Kong International Aviation Academy)と学生宿舍の建設をするなど、航空業界のボトムアップと人工島の有効活用を図る。加えて、人工島や航天城から東涌(Tung Chung)の中心部まで航天走廊として無人運転の交通システムを新設する計画だ。

 香港では毎月1200万件、1,300億香港ドル分が電子マネーで決済されているが、12月から「香港智慧城市藍圖2.0(Smart City Blueprint for Hong Kong 2.0)」をスタートして、さらなるスマートシティ化を推進するとした。11月15日に15カ国が署名した地域的な包括的経済連携(RCEP)について香港政府は2018年に参加する意向を表明していたが、積極的に加入に向けた努力をするとした。

 香港の4大主要産業の一つである観光業は26万人が従事し、多大な影響が出ているが6億香港ドルを投入して観光の振興に充てる。会議や展示会の開催も香港にとって大きな経済的に大きな収益源となっているが「會議展覽業資助計劃(Convention and Exhibition Industry Subsidy Scheme)」を策定し、今後1年間で10億香港ドル超を投入する。

 住宅問題については、330ヘクタールの土地に31万6000戸の公営住宅を建設するとし、2030-31年度までに30万1000戸を供給する。現在公営住宅に当選しても数年にわたって待つ必要があるため1万5000戸分の一時的な住居を3年以内に提供するとした。一定の基準を満たした人のみが応募・入居できる公営住宅である緑表置居計画(GSH)は2021年度に4700戸分を計画し、うち2100戸を2021年5月に供給する予定だ。香港鉄路(MTR)が大嶼山(Lantau Island)の小●湾(Siu Ho Wan)に所有している車両基地を住宅用地2万戸分に転用する計画を進める。

ビクトリアハーバー沿の23キロのプロムナードを2028年までに34キロまで伸ばしたい考えだ。9月に上水(Sheung Shui)から屯門(Tuen Mun)まで全長60キロのサイクリングロードが整備されたが、さらに延伸して屯門から●湾(Tsuen Wan)までの20キロを造成する。文化面では、西九文化區(WKCD)に建設中のM+博物館(M+ museum of modern)と香港故宮文化博物館(Hong Kong Palace Museum)の2つの博物館は2年以内に完成するとした。

 交通では2019年1月から交通費の補助をする計画が行われていたが、毎月3分の1を補助する方針は維持する一方で、限度額が最大400香港ドルから200香港ドルに引き下げられる。これを2021年1月1日から6月30日まで継続する。MTR20%割引についても2021年3月まで行うことをMTR側と合意したと発表した。

 新型コロナウイルスでリモートによる授業があったが電子デバイスの有無の関係で平等に学習できない児童生徒がいたことから、20億香港ドルを今後3年間で拠出。電子デバイスやWi-Fiルーターを購入するための格安のローンを整備するほか、香港の教育環境全般として電子学習に必要なプラットホームも整備する。

 ユニークなところでは、閉鎖された珍寶海鮮舫(Jumbo Floating Restaurant)を無償で海洋公園(Ocean Park)に寄贈することをオーナーが同意したことを明らかにした。

 ●港澳=奥の上の部分に号の下の部分。小●湾=虫に豪。●湾=草かんむりに全。