香港で日本の伝統工芸品や雑貨などを販売するセレクトショップ「ORION(オリオン)」(G/F, 169 Lai Chi Kok Road, Sham Shui Po, Kowloon, HK TEL 6504 3490)で9月18日、「teFuud 移動沖縄陶器市 in 香港」がスタートした。「やちむん」とは沖縄の焼き物のこと。沖縄の歴史的背景上、古くは清や東南アジアの国々と貿易を行う際にも、琉球王国の時代にも存在し、その後薩摩藩の時代に現在の文様や絵付けのスタイルが確立したともいわれる。
新型コロナ肺炎のパンデミックに見舞われる前は沖縄には年間約25万人の香港人が訪れるなど、海外からの観光客も多く、陶器を土産に帰る人も多かった。沖縄の作陶家たちも現地を訪れ直接購入してくれる人たちがいて成り立ってきたという。渡航制限措置が続き、行き来ができない中ではこれらの作陶家たちの中には生活が厳しくなっている現状もある。陶器は作る量も限られているうえ、中には誰がどのように使ってくれるかということを大切にする作陶家もいる。このような状況を克服するため、さまざまな工房をつなぎ合わせ、やちむんを一つのブランドとして売り出すため「teFuud」は生まれた。陶芸家だけでなく編集者やデザイナーも巻き込む。今回は8つの窯元と1つのガラス工房の商品を香港で直接販売する。初日は約30点の商品が売れた。
伝統工芸がいかにして現代の生活スタイルに適応しつつも伝統を守り、そして販売対象を拡大していくか、業界の課題が解決方法の一つの可能性として、海外へ、ネット販売ではなく必ず現地の人に手に取ってもらえる形で器を届けたいというのが、同ブランドが目指すところだという。
店内では、豆皿からカップ、皿まで、バラエティー豊かな200点以上を手に取りながら見てもらう機会を用意。数回にわたって商品を入れ替えることで、多くの人に「やちむん」を知ってもらう機会を作った。「コロナでテンションが低くなってしまう毎日ながらも、沖縄の青で元気にしてくれる」と話す客もいるという。
「やちむん」は厚みのある形成が一つの特徴で、ゴーヤやディゴ、ブーケンビリアの花など沖縄のモチーフを描いたものも多い。中でも目立つのは、ターコイズブルーを中心とした鮮やかな青色の陶器類。泡盛を入れる酒器「カラカラ」や泡盛に合わせた小さなおちょこなどは、「酒カテゴリー」として紹介する。
期間中は毎月1回、「窯元お邪魔します」と題してライブストリーミングで、沖縄の窯元と香港をつなぐ。19日には、十九三窯の徳尾聡さんが登場した。窯出してすぐの温かさ残る陶器を見せ、徳尾さんを象徴づけるシーサーからかわいいつまようじ立てや皿まで、各作品を紹介した。徳尾さんは「コロナ禍にもかかわらず、展示会を通じて沖縄のやちむんが香港の人々との交流の架け橋の一端として万国津梁(ばんこくしんりょう)となれば幸い」とコメントを寄せる。
沖縄県香港事務所の新垣寿所長は「香港では多くの沖縄のモノが流通しているが、『やちむん』など沖縄の生活の中で使われる物に焦点を当てたのは今回が初めて。多くの香港市民に沖縄の文化を知ってもらう貴重な機会になるし、使ってもらうことで沖縄を感じてもらえ、作家を元気づけられる機会になったのでは」と話す。
今後は、BtoB向けの展示会や台湾での展示などテストマーケティングをしながら販売を計画しているという。
営業時間は13時~20時。月曜定休。11月14日まで。