香港島を中心にバス路線を運行する城巴(City Bus)と新世界第一巴士服務(New World First Bus Services)を運営する匯達交通服務(Bravo Transport Services)は10月12日、香港初となる2階建ての電動バスが到着したと発表した。
香港における2階建てバスの歴史を見ると、第2次世界大戦後、日本という共通の敵を失った国民党と共産党による第2次国共内戦が始まり、中華民国内で難民が増えたほか、次第に共産党が優勢になり、香港に逃げ込んでくる人が多かったことにさかのぼる。香港の人口が急速に増えたため、その解決策として2階建てバスの導入が決まった。最初の車両は1949年に九龍巴士(KMB)が導入したイギリスのデイムラー(なおドイツのダイムラーとは別会社)の「丹拿CVG5(Daimler CVG5)」だ。
その後、いろいろな2階建てバスが香港を走ってきたが、ガソリンや軽油などで走る内燃機関は二酸化炭素を多く輩出し地球温暖化と深い関係があることから、次世代エンジンの開発が叫ばれてきた。その中でトヨタが開発したハイブリッドエンジンなどが販売されているが、ポスト内燃機関の最有力候補は電気自動車。軽油を燃料とするディーゼルエンジンで走るバスやトラックも、いずれはゼロエミッション車として走らなければならない。
カーボンニュートラル実現について日本は、国内の温暖化ガスの排出を2050年までに「実質ゼロ」とする方針を表明するなど、世界は動き出している。香港は、林鄭月娥(Carrie Lam)行政長官は10月6日の施政方針演説で、「2050年までにカーボンニュートラルを目指し、まずは2035年の時点で2005年と比較して炭素の排出量を半減する」とした。加えて2035年より以前にガソリンまたはハイブリッド車の新規の登録を停止する措置を打ち出す。電気スタンド設置に伴う補助金の申請は10万5000台分に達している。
環境保護署(Environmental Protection Department)によると、今回のバスは匯達交通と威馳騰(福建)汽車が合同で設計と製造の両方を行ったという。香港は山が多く平らな場所が少ない事、空調の基準が厳しいなど、電池を早く消耗しやすい地形であることから、そこを徹底的に研究した車両だ。車体には城巴の車両の従来のデザインである黄色に電動と二酸化炭素ゼロ排気を象徴する青を基調としている。まず新巴と城巴内で必要な車両テストを行い、運輸署での車検に備える。運輸署での車検をパスすれば正式な運行が可能となる。
一方KMB(九巴)は屯門(Tuen Mun)に赤●角隧道公路の行政大楼の横に大きな土地があり、電動バス専用の車両基地の建設を計画している。延べ床面積7926平方メートル、建物は11階建てで406台の電動バスを収容する考えで、バスの導入時期はどこの路線を走るかといった細かな情報は後日、発表するという。
●=魚へんに猟の旧字体のつくり