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香港のテレビ「i-CABLE」有料放送終了へ 赤字体質改善できず

有料放送を終了することになった有線寛頻通訊

有料放送を終了することになった有線寛頻通訊

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 テレビ放送と通信事業を手がける有線寛頻通訊(i-CABLE Communications)は6月1日をもって有料放送を終了すると発表した。原因は赤字が続き、回復の見込みがないと判断したため。香港政府の行政会議も2月14日、同社からの有料放送ライセンス返上についての申請を批准した。今後は、インターネットや固定電話といった通信サービスは継続するほか、無料地上波放送「HOY TV」「HOY 資訊台(HOY Infotainment)」の放送に注力する。

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 有線放送事業を担った「有線電視(Cable TV)」として香港大手デベロッパー、九龍倉集団(The Wharf (Holdings))が運営する形で1993年10月31日、「九倉有線電視(Wharf Cable Television)」として開局した。それまでは、1957年に開局した香港最初のテレビ局「亜洲電視(ATV)」(開局当時は有料)と1967年に最初の地上波無料放送として開局した「無線電視(TVB)」の無料地上波放送の2局体制だった。

 24時間放送で、ニュース専門チャンネル、サッカーや競馬などを含むスポーツ専門チャンネル、映画やエンタメの専門チャンネル、海外の番組など、アメリカのケーブルテレビ社会と似たような多チャンネル時代を主導した。同局では、NHK Worldを放送するほか、紅白歌合戦の放映権も獲得するなど日本人の加入者も少なくなかった。事業のもう一つの柱である通信事業サービスのインターネットに加入すれば、セットでテレビ番組が見られる「抱き合わせ販売」を行い、加入者を順調に伸ばした。

 潮目が変わったのは、同じく通信事業を行っている「電訊盈科(PCCW)」が2003年に「Now TV」を開局したこと。加入者の獲得競争が始まり、料金の値引き合戦が行われた。加入者獲得のキラーコンテンツなったのがスポーツ。イギリスのプレミアリーグやFIFAワールドカップを中心に放映権の獲得競争が起こり、多額の放映権料が財務を圧迫したことに加え(頻繁に放映権が移動したため、サッカーを見たい人は、その度に解約と加入を繰り返さなければいけなくなり、立法会でも取り上げられるなど社会問題となった)、スマートフォンの登場によりケーブルテレビに充てられていた費用がスマホ代に取って代わられた。さらに、ネットフリックスなどのサブスク型サービスの登場も財務悪化を加速させた。 

 経営環境が大きく変化した結果、2008年に初めて赤字に陥り、2015年になるとデベロッパーの遠東發展(Far East Consortium International)のトップである邱達昌(David Chiu)さんやデベロッパー最大手の新世界発展(New World Development)の鄭家純(Henry Cheng)主席らが出資した永升(亞洲)(Forever Top(Asia))が筆頭株主となり九龍倉から放送事業を引き継いだ。だが、経営立て直しはうまく行かず、2017年ごろから永升は有料放送の事業ライセンスを返上したい意向を表明。2021年になると、鄭家純さんの別会社であるCelestial Pioneerが、邱達昌さんらが所有していた株を取得し、事実上、有線電視は新世界発展の傘下になっていた。

 有料放送がなくなることで身軽となったことから、新世界としては無料地上波放送に注力したい考えだ。注目は、チャンネル78番のニュース・経済番組を放送する「HOY 資訊台」の扱い。同チャンネルのほとんどは有料放送で作られた番組の転用が中心であるため、有線電視の報道局がなくなるのか、地上波に移ることで番組を継続するのかが焦点となる。

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