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スーパー「大昌食品市場」、全店舗閉鎖へ 39年の歴史に幕

現在営業中の北角店もすでに多くの商品が棚からなくなっている

現在営業中の北角店もすでに多くの商品が棚からなくなっている

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 香港の食品スーパーマーケット「大昌食品市場(DCH FOOD MART)」が3月15日、香港内に28店舗ある全店舗を閉鎖すると発表した。閉店の理由に「不確実な外部要因」などを挙げている。同店は39年の歴史があるなど、香港市民に親しまれてきただけに、惜しむ声が上がっている。

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 同店は、食品のほか自動車、物流、家電販売、ヘルスケアなどを13カ国・地域で行っているコングロマリット「大昌行集団(Dah Chong Hong Holdings) /DCH」の一部門。同グループは1949年に恒生銀行(Hang Seng Bank)の創業者メンバー3人である何添さん、何善衡さん、梁球●さんによって設立された。

 自動車販売は50年以上の歴史を持ち、香港ではホンダ、日産、いすゞ、ベントレーなどを販売するほか、中国ではトヨタ、ビュイック、BMWなどの車も手がける。パーツの販売、修理、レンタカーなどビジネスも行っている。物流は中国全土で展開しているほか、家電は量販店「ahaa」を展開し、白物家電を中心に販売している。

 食品ビジネスも60年以上の歴史を誇る。肉は牛肉、豚肉、鶏肉などをアメリカ、ブラジル、日本などから調達しているほか、シーフードはアワビ、ロブスターなどをメキシコ、南アフリカなどから仕入れている。果物、野菜も日本、オーストラリアから輸入し、乳製品や米、油なども取り扱っており、いずれ香港を中心とした小売り、卸売り、レストラン、ホテル航空会社などに提供している。

 小売り部門であるスーパーは、1979年に「大昌行員工特賣中心」として、基本的に社員を対象とした店として設立された。最初は冷凍食品を特別価格で販売する形態のビジネスを行っていたが、1985年になると一般向けに冷凍食品のチェーン店に特化した「大昌紅肉海鮮商城」の店名で展開し、1992年に大昌食品市場と改名。冷凍食品から野菜、肉、魚などの生鮮野菜も扱うスーパーとして経営してきた。1990年代に入ると公営住宅周辺に出店することが多く、最盛期の2014年には90店舗まで拡大していた。

 閉店の原因に外部要因を挙げたが、状況はかなり複雑だった。大昌食品は、高級食材を主力にしているが、Citysuperなどの競合他社と比べて品ぞろえなどで劣っていたほか、恵康(Wellcome)などの大手スーパーと比べると規模で太刀打ちできず、価格では佳宝食品超級市場(Kai Bo Food Super Market)より高いなど、全てが中途半端だった。ネット通販の発達や深センでは米コストコが2024年1月12日に開店し、香港市民にブームとなったことも影響した。

 2019年の大規模なデモやコロナ禍からの客の戻りも悪い。香港政府統計処によると、2019年1月の小売業の売上高は481億香港ドルだったが、2024年1月は362億香港ドルにまで落ち込んでいる。5年間で約25%も減少したことになり、厳しい経営環境になっていた。

 従業員への4月の給与などは、最終雇用日から7日以内に支給されるとしているほか、会社の承認を得ることなく機密情報を外部に漏らしてはならないことを従業員に伝えている。スーパーの会員にも4月1日からサービスを中止するという通知を出しており、クーポン券などの割引について閉店までに利用することを伝えている。 

 食品スーパーのビジネスからは撤退するが、今後は上述の卸業務や食品加工業務などに注力するとしている。

 ●=王へんに居。

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