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香港M+でグラフィックデザインの父、ヘンリー・スタイナーさんの業績たたえる個展

M+, Hong Kong

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 香港の現代ビジュアル・カルチャー美術館「M+」で現在、香港におけるグラフィックデザインの父とも呼ばれるヘンリー・スタイナー(Henry Steiner)さんの個展「The Art of Graphic Communication」が開かれている。

会場内の様子 Installation view of Henry Steiner: The Art of Graphic Communication, 2024© M+, Hong Kong Photo: Dan Leung

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 香港の実業家包陪麗(シシー・パオ)さん・渡伸一郎さんの寄付による歴史的に重要な人物や瞬間を取り上げる展示「Pao-Watari series of exhibitions(パオ・ワタリ展)」の一環で実現した。M+のコレクションとスタイナーさん個人のコレクションから200点以上を展示し、1960年代から現在に至るスタイナーさんの重要なプロジェクトを紹介する。

 ヘンリー・スタイナーさんは、HSBCの赤と白の六角形のロゴ、スタンダード・チャータード銀行の銀行券デザイン、香港を拠点とする多くの有名企業のロゴをデザインした。1934年オーストリア生まれで、1961年から香港に住み、さまざまな作品を生み出した。そのグラフィックデザインは、アメリカ人デザイナー、ポール・ランド(Paul Rand)に師事した際に学んだ原則に基づいている。そして、複数の文化的要素を視覚的な鋭敏さで巧みに並置するグラフィック・コミュニケーションの形式を開拓した。

 会場は2つのセクションに分け、最初のセクションは、シュタイナーさんの形成期と香港への到着を紹介する。1938年、シュタイナーさんの家族はドイツに併合されたオーストリアを離れることを余儀なくされた。ニューヨークで教育を受けたシュタイナーさんは、当時を代表する芸術家たちに触れ、後にイェール美術学校で著名なアメリカ人デザイナー、ポール・ランドに師事。1961年、シュタイナーさんは香港に派遣され、「The Asia Magazine」誌の香港支局開設に携わった。1964年、自身の会社Graphic Communication Ltd.(現Steiner&Co. )を設立した。

 第2部では、アーカイブから選んだアイテムを展示し、スタイナーさんがデザインしたものが、「いかに香港の街そのものの発展や人々の日常生活の変化を反映しているか」を紹介する。オーシャンターミナルやコノートセンター(康樂大廈)(現ジャーディンハウス(怡和大廈))などの重要なランドマークから、香港のプロモーションキャンペーン、消費財、銀行、ホテル、プライベート・クラブまで数多くのプロジェクトを紹介。香港の最も永続的なブランドアイデンティティーにつながるものが多い。

 スハニャ・ラッフェル(Suhanya Raffel)館長は「香港のみならず世界のグラフィック・デザインの第一人者であるヘンリー・スタイナーの素晴らしい人生と作品をM+で祝うことができてうれしい。香港の人々の日常生活に深く浸透し、香港を国際的な舞台へと導いた彼の変革的で異文化的なデザイン。彼の作品は香港の視覚文化の重要な一部を構成している」と話す。「この回顧展は、当館の長年の研究の成果でもある。私たちの地域の物語を届けるというコミットメントの下、私たちはこの著名なグラフィックデザイナーの世界で最も包括的なアーカイブコレクションを所蔵している」とも。

 香港視覚文化担当キュレーター、ティナ・パン(Tina Pang)さんは「この展覧会は、芸術とデザインにおけるモダニズムの訓練と、アジアの歴史や風土言語に対する深い知識と感性を融合させることに長けた、多文化・異文化のコンテクストのためのデザインの先駆者としてのヘンリー・スタイナーを詳しく紹介するもの。1960年代からのシュタイナーの最も重要なプロジェクトを紹介するだけでなく、一般にはあまり知られていない彼の形成期やビジュアル・アートとの関わりをたどる。彼の主要なデザイン・プロジェクトの紹介を通して、私たちは観客に、シュタイナーの作品がいかに香港のビジュアル・アイデンティティーを形成し、過去数十年にわたる香港の社会的・経済的発展を反映してきたかを発見してもらう」と話す。

 ヘンリー・スタイナーさんは「アジアに根ざした視覚文化を称える著名な美術館であるM+での個展で、私の個人的な創作の旅と作品を目の当たりにできることは計り知れない喜び。私が故郷と呼ぶ香港は、長年にわたり私のプロジェクトにとって常にインスピレーションの源だった。さまざまな面で香港の変革的な成長に貢献し、世界中の観客にグラフィック・コミュニケーションという芸術を理解し、再想像してもらえるようになったことに、大きな誇りを感じている」とコメントを寄せる。

 開館時間は10:00~18:00(金曜~22:00)、月曜休館。11月10日まで。

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